決着
己に向かって放たれる竜のブレス。
ありとあらゆるものを破壊するそれに対して。
「惧れよ、生命」
僕は真正面からぶつかっていた。
死霊魔法の生み出す純粋な死のエネルギーを竜のブレスにぶつけ、ブレスそのものをこの世界から殺していく。
「ぐぬっ」
死のエネルギー。
その噴出はかなり負担が重く、魔力の消費量も馬鹿みたいなものだ。これ一つで押し切るなんて不可能に近い。このままなら、僕が先にガス欠を起こして竜のブレスに押し切られる可能性が高いだろう。
だが、それで十分だ。何故なら、長き時を生きる竜はイレギュラーに弱いのだから。
「ガァッ!?」
己のブレスがかき消されている。
その事実を前に竜は動揺を露わにすると共に、その口より放出させているブレスを消してしまう。
「ははっ!賭けに勝った!」
およそ、すべてを経験してきたと言えるだけの長い間を生き、ほとんどボケているような竜にとって自身の知らない新しいものというのには非常に弱い。
それは、僕の死霊魔法を見た瞬間に、一気に竜の戦い方が不安定になったことからも手に取るようにわかる。
「これで僕の勝ちだ」
竜のブレスは消え、そして、僕は代わりに竜へと急接近している。
「ふぅー」
既に竜の体には無数の傷がある。
「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああっ!」
それを致命的にするように、僕は死霊魔法による作った剣でもって竜の体を勢いよく切り刻み、そのうろこを破壊していく。
「ァァァァァァアアアアアアアアアアアッ!」
「死霊よっ」
うろこが破壊され、次々とむき出しになっていく竜の肉へと僕は強引に死霊たちの骨を埋め込んでいく。
「蝕め」
死霊たちの骨。
それは僕が自分の中にある死霊の骨だけを具現化させているものであり、その姿や性質は自分の意思によって自由自在に変えられる。
それすなわち、竜の内部へと入っていた骨をその中で変化させることも可能ということである。
「爆ぜよ」
骨を可変させる。広げる。
肉の中で骨を棘のように細かく伸ばし、それらを細々と枝分かれさせていくことで竜の体を一瞬で蝕んでみせる。
「ァァぁァァアアああアアアああアアああああアア」
竜の内部から針山のように大量の骨が突き出すと共に、血もあふれ出す。
「これで終わりだ」
竜の体から一気に力が抜けていく。
その身より急速に魔力が抜け、うろこの強度もそれに伴って下がっていく。
「……ァァァァ」
「しっ!」
力なく地面に向けだした竜の首を、僕は魔法でまた新たに作りだした大剣で一刀両断するのだった。
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