切り札
竜の咆哮。
圧倒的な暴威を前に。
「いってぇ」
僕たちは一気に陣営を大きく崩されていた。
王女様に覆い被って守っていた僕は背中に衝撃破を真正面から食らったことでダメージを負わされた。
「……うぅ」
「クソったれが、でたらめにも程があるだろっ!」
そして、ニーナとガリアも衝撃破を受けて吹き飛ばされ、地面を転がってしまっている。
一気に僕たちの側が追い詰められてしまったと言えるような状況だった。
「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
そんな中でも、竜は元気いっぱいで空へと再び上がっていっている。
「……切り札の使い時をミスるほどダサいことはないよな」
そんな竜を背に、ゆっくりと覆いかぶさっていた王女様から体を離して立ち上がった僕は彼の方を見る。
「……っ」
竜は悠々と空を飛びながら、こちらのことを眺めている。
どうやら、今すぐに僕たちの方へと追撃を加えてくるようなことはしないようだ……存外、向こうも疲弊しているのだろう。
「二人とも。休んでいていいよ」
そんな中で、僕は二人に動かなくてよい旨を伝える。
「はぁ……?お前、何言ってんの?」
「……おにぃ、全力でやるの?」
「うん。別にあれは何か代償があるわけでもないしな。ただ、ちょっとばかり見栄えが悪いというだけで……貴族だった時とも違って僕がわざわざいざという時の為の切り札を持っておく必要もない。ここが切り時でしょ」
「確かにそれはそうだけどぉ」
「ほぉーっ?まだ出来ることがあるならはよ!割とマジで、全滅ありうるぞ?」
「そう思ったから僕も全力でやると決めたんでしょ。結構なゲテモノだからあまり人前で使うようなものじゃないんだけどねっ」
僕は手を合わせ、息を吐く。
そして、魔法の発動の準備を行っていく。
「……ッ!?」
その途中で、僕の雰囲気が変わったことを敏感に竜が感じ取ってくる。
「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
そして、そのまま竜は咆哮を上げながら再びこちらの方へと突進してくる。
「よしっ」
だが、僕の準備は整った。
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