王子……?
僕があれ?王子ってば、なんか女じゃね?
そんなことを思っている間にも、話はとんとん拍子で進んでいく。
休んでいた僕とニーナは王女の護衛の為に呼び出されて、今回会談が行われる会議室へと移動。
そこに帝国の王子たち一団がやってきて、もう会談スタートである。
「さて、君たちは俺が以前、持ち掛けた話をどう考えてくれただろうか?俺と君の仲を信じたいのだが……」
「……」
王女様の対面の席に腰掛け、ゆったりと、明らかにこちら側を舐め腐った声を上げてくる帝国の王子。
そんな彼は何処をどう見ても男だし、何処をどう聞いてもその声は男であるが……それでも、僕の直感は確実に目の前にいる王子が女であると断言していた。
直感とは言っても、れっきとした根拠がある方の直感だ。
僕は魔法等で様々な知覚系の能力を底上げすると共に、外付けで未来視、予知、神託などの高難易度魔法を非常に薄めてただの感覚レベルにまでしたのを合わせて作りだした超感覚をつけている。
これらの能力はすべてを看破するようなものではないが、それでも概ねのものを感じ取ることが出来る。
「えぇ……ですが、その答えを出すよりも前に。一つばかり新しい私の護衛を紹介しても構いませんか?」
僕が目の前にいる帝国の王子が本当に男なのか。
それを疑っている間にも話はすすんでいく。
「後ろの二人か?」
「えぇ、そうです。自己紹介をお願いできます?」
すぐに僕の喋るターンがやってきてしまった。
「どうも、初めまして。私はカルミア王国のアイランク侯爵家の元嫡男、カエサルにございます。今はアイランク侯爵家から追放され、Aランク冒険者の立ち場にある者です。以後、お見知りおきを」
僕は貴族としての作法でもって、決して遜るわけではない自己紹介を帝国の王子へと向ける。
「ほぉー、良い手を打ってくるじゃん。こりゃ、無理だな。俺と向こうさんの婚姻はなしだ。悪いな、時間をとらせて」
そんな僕の自己紹介を聞いた瞬間。
王子は一切迷うことなく、早々に自身の策を投げ捨てる。
「完璧な一手だ。どうやってそんなコネを引っ張ってきたんだが……カルミア王国を出してこられたら俺の策はハマらんなぁ」
「ふふっ」
ついでに言うと、これだけ爆速の撤回術を前にしても一切揺らぐことなく、ポーカーフェイスを保っていられる王女様の方もすごいな。
僕と繋がりが出来たのは普通に偶然でしょ、そっち視点だと。
「なぁ、追放者。俺と組まんか?俺が皇帝になった暁には帝国で厚遇するが?」
そして、更に更にそんな王女様に対して、王子の方も負けていない。
迷いなく僕を引き抜きに来たのだ。
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