到着
勝手に、王女様と僕との間で決めてしまった護衛の話ではあるのだが、あまりにもあまりにもな話だった。
冷静に考えて、いきなりAランク冒険者を王女の護衛にするなんて簡単にできるようなものじゃなかった。
「いやぁー、大変だった」
「……何で、あの女の為に徹夜までしてあげなきゃいけないのぉ、もう」
僕を王女様の護衛役とするための諸々の取り決めにはかなりの時間がかかり、結局、一晩中かかってしまって僕とニーナは共に家の方には帰れず徹夜していた。
とはいえ、だ。いきなり王女の護衛に二人付け加えるなんていう荒業をして徹夜で済んだこと自体が凄いと言えるだろう。
「別にニーナまで護衛役をやらなくてよかったんだよ?」
ちなみに、ニーナも僕と一緒に護衛役を勤めることになっていた。
「おにぃたちだけに任せるわけないじゃん。私も絶対に行くから……余計な、ことはさせないよっ!おにぃは私だけのものなんだから!」
「うん、そうだね」
僕は今、自分の膝の上に座っているニーナの頭を撫でながら頷く。
妹が嫉妬深いことはちょっと嬉しいけど、ちょっとニーナの場合は重すぎるよね。兄離れ出来るのかな?ニーナは。
「むぅ……私だけのおにぃになるはずだったのに。余計な女どもが蠅のように湧いてきてぇ」
「口汚いよ。ちょっと笑えないレベルのディス入っているから。ステイ、ステイ」
「むぅ」
ニーナには限度を忘れないでほしい。
「んっ」
王城の一室にある窓辺の椅子に腰かけてニーナとくつろいでいた僕は王都へと入ってきた仰々しい馬車の一団を発見する。
「んっ、おいでなすったか」
ずいぶんとど派手な馬車の一団、その中心に位置している天井のない馬車に乗る帝国の王子と思われる男が王都の民衆に向かって手を振っている様を見ながら僕は声を上げる。
「……って、うん?」
「……ァ?」
優し気な笑みで手を振っている王子。
それをぼーっと眺める僕はその途中でとんでもないことに気づく。
短い髪に伝統的な帝国王子としての衣装。
誰がどう見ても男としか見えないイケメン高身長で立派な王子……として、誰もが見るであろう帝国の王子様。
だがしかしだ。
「あれ?あいつ、女じゃね?」
「はぁー?」
そんな王子を眺めながら、その人物が女であることと気づいてしまった僕は困惑の声を漏らすのだった。
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