結果
唯一、頼れるのが僕だけだった。
「お兄様、少し助けたくなっていますよね?」
その言葉を聞いて揺らいでしまっている僕へとニーナが声をかけてくる。
「う、うん……まぁ」
それを否定せずに僕は肯定する。
ここで嘘をついてもしょうがないだろう。
「まぁ……っ!」
「お兄様。そんな甘さは不要です。目の前の女はお兄様の優しさに付け入ろうとする悪女です。即刻に関係を切るのが先決であると思います」
「それは……確かに、事実です。ですがっ!どうか、どうかこんな汚い私を救ってくださいませんか?」
「……まぁ、婚約者は無理です。自分と婚約してもどうせ今の均衡を壊すことになってしまうので」
追放されている身でどれほどの影響があるのかというのは少し、不思議なところではあるけど……それでも、一切の問題が生まれないかと言われればそんなことはないと思う。
生まれというのは基本的に何処までも自分の周りに引っ付いてくるのだ。
「そう、ですよね」
その思いから断りの言葉を告げる僕に王女様は明らかすぎる落胆の表情を見せる。
「ただ、別の方法を探すことは出来ると思います」
「えっ?なんでしょうか?」
そして、次なる僕の言葉で王女様は一気に表情が明るくなる。
「……ぎりっ」
「単純に自分を護衛として置くのです」
「護衛、ですか?」
「はい。護衛です。自分に王女様の護衛をお任せください。これでもAランク冒険者ですから。王女様の護衛を務めるには十分な肩書きかと」
大国が冒険者を自身の護衛とするなど決して許されることはでないが、それも小国となれば違う。
人材に欠ける小国であれば国政に冒険者を利用することもしばしば見受けられる。
王女様が僕を護衛とするのはそこまで筋の通っていない話でもないだろう。
「本当に、それだけで大丈夫なんでしょうか?」
「というより、それだけで良いのではないでしょうか?自分がいるだけで相当な威圧感になるでしょうし」
わざわざ婚約者になるよりも護衛として帯同する方がスマートだろう。
「他の大国の侯爵家の人間がいる中で向こうとてそんな大がかりなことは出来ないですよ。むしろ、出来たりしたら困ります。カルミア王国はあの帝国に軽んじられるほどの小国ではありませんから」
「……それも、そうですね」
僕の言葉に王女様が頷く。
「それでは、帝国の王子との会談中の護衛を貴方に頼んでもいいでしょうか?」
「えぇ、お任せを。確実にお力となってみせます」
僕は目の前にいる王女様の言葉に力強く頷くのだった。
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