もめごと
僕たちはカルミア王国の侯爵貴族出身だからそのお願いを聞き入るのは難しい。
「……そう、ですか」
そんな僕の言葉を聞いた王女様は明らかに意気消沈とした様子を見せる。
「ねぇ、王女様」
その様子を見ていたニーナがゆっくりと、これまで閉ざし続けていた口を開く。
「お兄様以外の人もいっぱいいますよ?これでも私は多くのコネをもっていますので……お兄様以外のAランク冒険者の方の知りあいもいますが、よろしければ紹介いたしましょうか?皆さん、とてもいい人ばかりなのですよ」
「んっ?」
何それ、お兄ちゃんは知らないよ?僕に自分たち以外のAランク冒険者とのコネなんてないんだけど、何でニーナが持っているの?
「それはありがたいのですが、あまりにも明らかすぎるのは少し、問題があるでしょう。呼びよせたAランクの冒険者をいきなり婚約者とするのは最低限、婚約者になりえるだけの記憶が必要なのです」
「あら?お兄様との間にもそんな記憶、ないはずですが?」
「一度、私は助けられていますので。最低限の理由付けはあるのです」
確かに、王女を助けた転生者がそのまま彼女と恋仲になる、ってのはよくあるテンプレートだわな。
「それでも、お兄様の方にはございませんわ」
お兄ちゃんってば、前世でも特に恋愛経験がなかった経験不足のざこざこのおにぃなので、実は女の子から軽く微笑まれるだけで落ちてしまうかもしれないので、割と理由付けは十分かも。
「ふふふ……本当にそうでしょうか?」
「はっ?」
煽りよるなぁ、王女様も。
というか、ニーナはお兄ちゃんに対してどれだけ嫉妬心を剥きだすにするの?娘を彼氏に取られた父親以上のものを抱いていない?
僕が彼氏を連れてきたニーナを前に泣き崩れるよりも、彼女の方が泣き崩れ……いや、今のニーナを見るにこいつ泣くか?なんか普通に別れさせようとしてこそう。
なんかちょっと、怖い。大丈夫かな?僕は彼女作れるかな?もしかすると、ニーナが兄離れするまで僕は年齢=彼女いない歴確定?
「それに、です。ニーナ様のご提案も素敵ではあるのですが、そもそもとしての問題があるのです。明日はもう既に王子の方がこちらへと来てしまう頃合いのです……それですので、もう手遅れなのでございます。そんな中で、唯一。頼れるのがカエサル様だったのです。私は、あの時は天が授けてくれた祝福だとさえ、思ってしまったほどです」
「はぁ……?」
「んぬっ」
唯一、頼れるのが僕だけだった。
そんな言葉を聞いてしまった既に傍観者を決め込んでいた僕は少し、心を動かされてしまうのだった。
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