自室
王城の中。
そこを王女様から連れられる形で僕とニーナは進んでいく。
「どうぞ、そちらの方へとおかけください」
そして、最終的に通されたのはずいぶんと可愛らしい部屋だった。
その部屋に置かれているソファへと僕とニーナは座るように促される。
「失礼します」
「……」
僕がニーナと共にソファへと座ると。
「どうぞ、紅茶にございます」
「これはわざわざご丁寧にどうも」
元々、ソファの前に置いてあったローテーブルに用意されていたティーセットを用いて王女様がわざわざ紅茶を淹れ、僕とニーナの二人にそれを渡してくれる。
そんな王女様は僕たちに紅茶を淹れた後、自分たちの対面の席へと腰を下ろす。
「ここは?」
ベッドとかもあるし、明らかに応接室、といったような場所ではないように見受けられるけど。
「えぇ、私の部屋ですよ。どこに招待するかを悩んだのですが……少し、私の部屋に殿方を呼んでみたくて」
「……なるほど」
僕は王女様の言葉に頷きながら、静かに紅茶の入ったティーカップを口元へと運んでくる。
……およ?なんだ、今の発言。
まるでこちらのことが好きであるとでも言いたげな声色じゃないですか。
「……ッ!!!」
僕はちょっとだけドギマギしながら、それでも精神年齢を単純計算すると30歳を超える大人と言える理性を生かして紅茶でそのドキドキを押し流す。
「実に可愛らしくていい部屋ですね」
そして、そのまま爽やかに笑顔だ。
「あ、ありがとうございます……えっと、それでです。本日招待させていただいたのは、以前。助けて頂いた時のお礼をするためにございます。私の手で出来ることならば何でもいたします。」
「なるほど。そのご厚意、非常にありがたく思います……ですが、お礼と言われましても、こちらとしては人として当然のことをしたまでです。わざわざお礼をしていただくようなことはないですし、そもそもとして大方満ち足りているのですよね。お金にも、住居にも、仕事にも幸運なことに困っていませんし」
「それは素晴らしいですね。でしたら、何か。私にしてほしいことが出来たのであれば、お知らせください。すぐにでもお力になりましょう」
「おぉ、自分たちも少々傷を抱えた身ですから。王女様にそう言ってもらえるのは助かります」
「それならばよかったです。それで、なのですが。お礼の為に呼んでもらった手前申し訳ないのですけど、少しばかりお願したいことがあるのです」
「はい。何でしょう?依頼という形ならば冒険者ですから。お受けいたします」
「ありがとうございます。まず、要件といたしましてはカエサル様に私の婚約者となっていただきたいのです」
僕へと依頼という形で王女様が告げた来た衝撃のお願い事。
それに対して。
「えっ……?」
「ふっ」
僕の困惑と驚愕のつぶやきが漏れ。
そして、自分の隣で静かにティーカップの割れることが響いてくるのだった。
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