王城

 あくまではただの小国。

 規模感としては僕たちが生まれ育った屋敷よりも小さい程度でしかない王城。

 そこへと僕はニーナとともにやって来ていた。


「随分とみすぼらしい上に小さいわね、良くもこんなにところに私たちを呼べたものね」


「思っても言うな?そんなこと」


 あと、別にみすぼらしくはないやろ。

 白を基調とした小さいながらも美しく、威厳のある良い城だろう。

 国の象徴たる王城としてふさわしいものを持っているでしょ。

 結構、好きよ、僕はここ。


「むぅ……」


 だが、そんな僕に反してニーナはかなり不服そうである。


「えっと……それで?僕たちはどこに行けばいいんだ?」


 昨日の夜に自分たちのポストに入れられていた、急ごしらえにはまるで見えないしっかりとした王城への招待状。

 それを握る僕は自分がどこに行けばいいのかわからず、辺りを軽く見渡す。


「出迎えのひとつも寄越さないなんて小国らしいみすぼらしさね」


「だから、そういうこと言わないの。超えちゃいけないラインがあるんだよ?イライラしてても超えちゃいけないところはダメ。守らないと」


「……むぅ、わかった」


「うん、いい子だね」


 ニーナはちゃんと僕が駄目だよ、と言えば頷いてくれるから有難い。

 まぁ、なんか元からそこら辺ちゃんとわかっている節もあるけど。僕から怒られたい感を彼女から若干感じるのだ。

 とはいえ、なんの出迎えもないのは困る。


「カエサル様」


 そんなことを考えていた僕の背後から声をかけられる。


「んっ?」


 背後に振り返ると、そこにいるのは王女様と女騎士であった。


「お家の方へとお迎えにあがるつもりだったのですが……申し訳ありません。どうやら入れ違いになってしまったようです。私たちが遅れてしまいました」


「あぁ……」


 なるほど、そういうことね。

 わざわざ、王族である王女様自ら僕とニーナの家に来てくれていたのね。


「いえいえ、大丈夫ですよ。むしろ、せっかちですみません。それでは、ここからとはなりますがエスコートをお願いしても?ちょうど、ここからどこに行けばいいかわからず途方に暮れていたのです」


「そうでしたか。合流出来て良かったです。それではこちらの方に」

 

 王女様が女騎士と共に僕とニーナの前に出て、そのまま先導を始める。


「わかりました」


「むぅ……なんか仲良さげに話している」


「ほら、行くよ。ニーナ」


「むぅ……手を握って」


「うん、わかったよ。はい」


「ふへへ」


 僕は膨れているニーナと手を繋いで連れて行き、先を行く王女様と女騎士を追いかけていくのだった。

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