祝いの次の日

 僕とニーナが知り合った記念日。

 それを祝って共に七面鳥を食べた次の日。


「本当に行くの?おにぃ、別にあの女からの誘いなんて断っちゃえばいいじゃん。別に私たちが一緒に行く必要は一切なくない?」


「いや、駄目でしょ」

 

 僕はニーナと共に王女様の方から誘われていた王城の方へと向かう準備を行っていた。

 まぁ、とはいえ、ニーナはまるで乗り気じゃないようだけど。


「今の僕たちはあくまでフリーの冒険者でしかないんだから。王族とかにお呼ばれして、それで行きたくありません!なんてことはそう簡単に出来ないでしょ。ただでさえ、僕たちは暗殺者に狙われて逃げてきたという不都合な事実もあるわけだからさ」


 そんなニーナへと僕は諭すように声をかけていく。


「むぅ……なら、別の国に行くことだって出来るよ?」


「無茶言わないで。そもそもとして、まだ成人してない餓鬼二人組ってだけで明らかにおかしいんだから。そんな僕たちに家を与えて自由に住まわせてくれるところとか稀だよ?」


 何よりも安住の地を求めてさまよい歩くとかいう面倒なことを僕はしたくない。

 自然があって住みやすく、ほどほどの拘束程度で済む、この国のようなところが僕は一番だと思うし。


「むぅ」


「ほら、その可愛いほっぺたを膨らませないで」


「……私のほっぺ、可愛い?」


「うん、可愛い。ほら、その可愛い体を更に可愛くするためにお洋服へと着替えましょうね」

 

 王城へと行くのにフラットな恰好で行くわけにもいかない。

 しっかりとしたフォーマルな恰好にする必要がある。

 既に僕は着替え終わっているので、あとはニーナがちゃんとしたドレスを着てくれれば、もう王城の方へと行くことが出来る。

 僕はささやかにニーナの背中を押しながら彼女の着替えを仕舞っているウォークインクローゼットへと向かわせる。


「……わかった。私のキレイな姿をどぉーしても見たくてしょうがないおにぃの為に着替えてあげる」


 それにニーナも途中から抵抗することを辞めて大人しく従ってくれる。


「はーい、ありがとねっ。それじゃあ、綺麗にお着換えしていこうね」


「仕方ないから、私はおにぃのセンスへと任せてあげる。ちゃんと私をうまく着飾ってよ?」


「それなら任せてよ。僕はこれでも一応、貴族の息子。色々な女性のコーデを見てきたからね。ちゃんとそこら辺の経験もあるよ」


「それは嫌だから撤回して」


「んっ、いや、僕の経験はいっぱい君を見てきたってことだからね」


「なら良し。むふっー」


 僕は上機嫌になったニーナと共にウォークインクローゼットへと入るのだった。

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