対立
僕が何かを答えるよりも前に怒りを爆発させていったニーナ。
「どなたですか?」
そんなニーナは言葉の裏に隠しきれようのない怒りを感じさせながら……に、ニーナ?ど、どうしよう。ニーナがさっきのような敬語モードに戻っちゃったよ。
「あっ、申し遅れました。私はこの国の王女であります……アリス・ヴィンセントです」
ニルシア小国ヴィンセント朝の子女。
それが目の前にいる少女であり……貴族としての格は貴族家から追放される僕たち兄妹以上と言える。
だから、ニーナにはちょっと自重してほしいのだけど。
「そうですけど」
「本日はつい先ほど、そちらにいるカエサル様より受けたご恩を返すために参りました。是非とも、王城にまでご招待させてほしいのです」
「結構です。私とお兄様は二人で生活しておりますので。迷惑です。これから夕食も食べるところなのです。いきなり訪れられても困ります」
駄目そうですね。
これっぽちも自重する気はないみたいですね。
「あら、そうでしたか。申し訳ありません。いきなりが過ぎましたね」
「えぇ、いきなりです。無礼にも程があるでしょう」
でも、それでも、少しくらいは勢いを下げよう?
「まったくもってその通りです。カエサル様が一人だと思っていました。申し訳ありません。まさか、こんな可愛らしい妹さんがいるとは思っていなかったんですよ」
まぁ、何とか向こうの王女様の器が大きかったことで何とかなっているけどさぁ……お兄ちゃんとは心配だよぉ。
情けないことに、今のニーナはちょっと怖くてあまり声をかけられないけど。
「……っ」
「ふふっ……」
それにしても……何でこんなことになっているんだ。
何故に王女様とニーナがここまでいがみ合っているんだ。やんわり断って王城の方に帰ってもらうだけでいいのに。
「それでは今日のところは失礼しますね」
「もうこな」
「ところで、妹さんはお兄様であるカエサル様のことを愛しているんですね」
「とうぜ」
「ですが、いつかは兄離れするときが決ますから。兄妹では結婚できませんから……ふふっ、それでは」
王女様はニーナへと喋る隙間を与えず、滑らかに淡々と自分の言いたいことばかりを告げていく。
「……ァア゛ッ!?」
そんな一連の言葉の最後。
それを聞いた瞬間、ニーナがこれまで見たことないほどの激怒の感情をあらわにする。
「……っ!?」
その怒りを前に僕は思わず体を震わせる。
「……っ、あの女ぁ」
そんなことをしている間に王女様と女騎士の二人はもう既に玄関から出てしまっていた。
そのせいでニーナはぶつけるべき怒りの相手がおらず、その場で悔しそうに歯ぎしりを始める……あっ、そういえば、何で王女様は僕の名前を知っていたんだろうか。
名乗った記憶はないけど。
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