いつも

 僕から花を受け取って上機嫌に笑みを浮かべ始めたニーナは満足するまで笑い続ける。


「おにぃ!」


 そして、その果てに元気よく、いつもの調子で僕のことをニーナが呼ぶ。


「おにぃの為を思って、私も豪華な料理を作って待っていたんだよ。ほらっ!一緒に食べよっ!」


「あぁ……うん、そうだね」


 テンションの落差。

 それを前に風邪をひきそうにはなるものの、それでも僕はニーナの言葉に頷く……色々と困惑ぞろいではあるが、やっぱり慣れたメスガキモードの方がいいな。

 そっちの方がニーナという感じがある。


「楽しみにしている」


 僕はいつもと同じようなニーナの言葉にうなづき、意気揚々とリビングに向かっていく。


「今日は何を作ったの?」


「えー、えっとねぇ……お祝いの時によく食べられる七面鳥の丸焼きを作ってみたよ。ふふ……私はおにぃとは違って魔法の加減調整が得意だからねぇ。いい感じに作れたと思うから楽しみにしてよね」


「おー、七面鳥か」


 基本的に異世界も地球も食べられているものはほとんど同じだ。

 そして、 七面鳥がお祝いの時に食べられているのも同じだ。


「いいね、楽しみ」


「でしょぉー?」


 僕が上機嫌なニーナと共に玄関から伸びる廊下を抜け、リビングへと踏みいれる……そんなタイミングで。


「ん?」


 僕たちの家をノックする音が響き渡ってくる。

 もう既に夜も遅いのだが、一体誰だ?


「むぅ……」


「誰やろな」


 そんな疑問を抱きながら、僕とニーナは玄関の方にトンボ返りしていく。


「はーい」


 そして、僕は迷いなく玄関の扉を開けてこんな夜遅くにやってきた来訪者へと自分の顔を見せる。


「あっ、カエサル様。お元気ですか?」


「はいっ?」


 玄関の扉を開けて来訪者を出迎えた僕はその、目の前にいる人物を見て僕は困惑の声を上げる。


「す、すみません……こんな夜分遅くに、ですが王女様がどうしてもと言うので……」


「……はぁ」


 自分の家にやってきた来訪者。

 それは僕が助けた王女様と女騎士の二人組であった。


「……えっと、何の用ですか?」


 ちょっと想定外の登場である二人に僕は動揺を漏らしながら、そのまま彼女へと疑問の声をぶつける、


「ふふっ、お礼にしに参りましたわ。王族として、借りをそのままにしておくわけにはいきませんから。助けて頂いた命。もはやそれを捧げることさえも厭わないですわ。まずは手始めに王城の方にお招きしたいのですが」


 は?命を捧げる?えっ?なにそれ、おもっ。


「え、えーとぉっ……」


 僕が困惑しながら王女へも返答するよりも前に。


「……ァ?」


 自分の隣にいたニーナが怒りの声をあげるのだった。

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