道中
ガタガタと揺れ動きながら森を逞しく進んでいく綺麗な姿の馬車。
そこには僕、王女様、女騎士、メイドさんの四人が乗っていた。
「すみません……結局のところ、馬車を直すところどころか、魔物に恐れて逃げていた馬も捕まえてきてもらっちゃって」
「いえいえ、これくらい大丈夫ですよ」
今、走っているこの馬車は半壊状態になっていたものを僕が魔法で直したものであり、それを進めている馬も自分が魔物から逃げ出して森を彷徨っていたところを確保した奴である。
「そればかりか、馬の操作まで」
ついでに言うと、今走っている馬車の馬を操縦しているのも僕だった。
「……私が、しっかりと馬を操作出来ていれば」
女騎士の方は馬を操作することが出来ないかなり珍しいタイプの騎士であり、当然のように王女様とメイドは馬を扱えない……いや?これは当然か?王族であれば教養として馬の操作くらい習っていそうではあるけど……まぁ、とにかく仕えないのだ。
そうなってくると必然的に選択肢は僕しか残っていなかった。
別に馬を操縦したことなんて一回もないが、精神系統の魔法を用いて馬へと干渉すれば簡単に自分の思っている通りに動かすことが出来た。
「まぁ、誰しも得意不得意がありますから」
「……そうですよね」
「ですが、貴方には得意不得意があるんですか?」
「ありますよ……?パッとは出てきませんけど」
前世だったら結構不得意なことがあったのだが……今の場合、大体を魔法で片付けられるようになっちゃったからなぁ。あまり不得意なことと聞かれてもパッとは出てこない。
「それ、ないやつじゃないですか?」
「そんなことないですよ。僕はたまたま、生きていく上で必要になってくることの凡そが得意、というだけです。これはかなり大きいことでしょうが、だからと言って僕がそれによって他人より人間として出来ているということではないですよ。種の保存を考えた時、あまり普段は目立たない病気に強い、だとか繁殖能力が高いだとかも重要になってきますしね。目に見えるものがすべてじゃないですよ。本当に大事なのは隠されているものです。ちなみに自分は病気に弱いです」
魔法である程度の病気は治せるのだが、治せないタイプの病気に罹った場合の僕は他人よりもかなり多くのダメージを負うことになる……マジで風引くの嫌なんよねぇ、前世からもそうだった。
「……なるほど」
僕の言葉に女騎士の方は納得が言ったように頷く。
彼女はゲームにおいて、病気にとても強いキャラとして描かれていた……それを、今の状態で理解しているのであれば僕の言葉もある程度女騎士の方にも届いてくれるかな?
つか、本当に病気に強いっていいよね。マジで羨ましい。隣の芝生は青く見えるって言うけどね。
「人間なんて十人十色ですよ」
僕は馬を操りながら、助けた王女様たちと共に王都の方へと向かっていくのだった。
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