王女様

 クマの魔物を倒し終えた僕は女騎士の方へと振り返る。

 そこにいるのは三人の女性陣。

 一人はまだ幼い腰まで伸びた金髪に碧眼の、まさにThe・王女様と言えるような実に可愛らしい王女様。

 その隣にいるのはしっかりと全身を覆い隠した気品のある黒髪のメイドさん。

 最後にサイドストーリーへと出てきたよりかはずいぶんと柔らかい顔つきにはなっているものの、それでも確かにゲームそのまま、高身長かつ筋肉質でポニーテールの白髪に琥珀の瞳を持った女騎士である。


「大丈夫でしたか?」


 おー、マジで三人ともゲームのままだ。

 自分の顔がまさにゲームそのままなのだが……こうして、サイドストーリーで存分に出てきたキャラが動いて声を上げているってのはやっぱり別だよね。

 僕は内心で湧き上がってくる前世の経験から来る感動を抑えた状態でその三人へと声をかける。


「え、えぇ……大丈夫です。おかげで助かりました」


 そんな僕の言葉にまず、女騎士の方が頷きながら答えてくれる。


「非常に情けないことですが、貴方がいなければ……私たちは全滅していたでしょう。本当にありがとうございます。これは、何とお礼すればいいのやら」


「いえいえ、お礼なんてそんな。大丈夫ですよ」


 別に僕はただ、ゲームのキャラをリアルで見に来ただけとも言えるからね。

 そんな感謝されたくてしているようなことでもない。


「そんなわけにもいきませんっ!」


 だが、そんな僕の言葉を力強く否定するのは女騎士の方ではなく王女様の方だった。

 うーん、ここで死んでいたはずの王女様が生きて動いているのは中々に感動出来るね。


「一人の王族として、このまま借りを作りっぱなしというわけにはいきません。必ずやお礼をさせてもらいます。そうでなければ、私の沽券にも関わってしまいますので」


「そういうことなら受けるのもやぶさかではないですが……」


 やけに勢いのある王女の言葉に……あまり、帰りが遅くなるとニーナの方に心配をかけるから嫌なんだけど。


「ナーシャ様」


 そんなことを思う僕に対して、得意げな王女様の方にメイドさんが声をかける。


「何ですか?」


「それよりもまず……あちらの馬車の方に視線を向けてください。完全に壊れてしまっています。まずは足を何とか用意するところからになるでしょうし、そもそもとして、今日中に王都の方に戻れるかもわかりません」


 そして、そんな彼女が手を指し示すのはクマの攻撃によって完全に壊されてしまっているこれまで乗ってきていたであろう馬車の方だった。


「……あっ」


 それを見た王女様は口をぽっかりと開けながらハッとした表情を浮かべるのだった。

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