クマの魔物
自分の手元から溢れていく水。
「凍れ」
それが僕の魔法によって、パキパキと音を立てて氷と化す。
その氷が象っているのは一振りの剣である。
自分の高密度な魔力がたっぷりと込められた水を元として作られたこの剣の頑丈さと切れ味は名のある名剣であっても凌駕するほどである。
「貴方は下がっていて大丈夫ですよ。あれくらいなら自分一人で倒せますので」
そんな氷の剣を手に持つ僕は自身の隣にいる女騎士を下がるように言いながら、己の蹴りから立ち直ってこちらを睨みつけているクマの魔物の方に近づいていく。
「い、いえ!貴方のように子供にすべてを任せるわけにはっ!」
だが、そんな僕へと女騎士は抗議の声を上げる。
「自分はこんな身なりですが、Aランク冒険者なんですよ」
それに対して、僕が切るのは自分の冒険者としてのランクである。
この肩書きは最強だ。
Aランク冒険者だと言っておけば、相手は概ね何も言えなくなってくれる。
「……ッ!?Aランク冒険者っ!」
「えぇ、ですので、ご安心を」
僕は優雅に女騎士たちの方に一礼した後、氷の剣を片手にクマの魔物へと近づいていく。
「ガァァァァアアアアアアアアアアアッ!」
そんな僕へとクマの魔物は大きな方向を上げながらこちらへと突撃してくる。
「ァァァアアアアアアアアアッ!」
そして、行うのは先ほども見たその強靭で大きな腕の横振りである。
「ふっ」
それを前に大きく一歩踏み出し、クマの魔物とほぼゼロ距離と言えるほどに近づくことで己の安全を確保する。
「ハッ!」
そして、自分の手にある剣をクマの魔物へと振り抜く。
「ァァァアアアアアアアアアっ!?」
剣の直撃を食らったクマの魔物は醜い悲鳴を上げながらも自分の一刀に抵抗し、何とか己の首の半分を僕の剣が斬り裂いたところで止めてみせる。
「がぁっ!」
そして、そんなクマの魔物は先ほど横振りしていた腕を縦に構えて爪を光らせ、僕の腹を貫こうと真っすぐに振り抜いてくる。
「足らぬなら……」
だが、そんな一撃は僕が張り巡らせる結界によって止められる。
そして、そんなことをしている間に僕のもう片方の手には水が流れ始めていた。
「もう一本」
それが最初の時のように凍結。
もう一つの剣を生み出してみせる。
「さようなら」
一本で半分まで行けた。
ならば、もう一本で反対側から振り抜けば……。
「……ァ」
クマの魔物の頭が落ちるのは当然だった。
「ふぅー」
自分の二振りによって首を落とし、そのまま体の方もゆっくりと倒したクマの魔物を見ながら一息ついた僕は血に染まった氷の剣をこの場より消すのだった。
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