サイドストーリー
ゲームのサイドストーリ。
幾つもあるなサイドストーリーの中に、自身が愛し、絶対の忠誠を誓っていた王女を亡くしてしまった女騎士の物語が存在する。
流れとしては、主人公と共に王女を殺した魔物を女騎士が倒し、それによって過去の罪を幾ばくか下ろせた彼女がまたた新しく自分の人生を歩んでいく、というものになっている。
あれはあれで実に美しく、素晴らしい物語であったが……最良としては、王女が殺される瞬間に主人公から助けられることだろう。
「まぁ、僕は主人公じゃないけど許してね」
ということで、僕はその最良を追い求めるため、王女が絶賛、魔物から襲われている最中であろう場所を向かって進んでいた。
サイドストーリーに出てくる王女と女騎士が属する国はニルシア王国であるし、この事件が起きたのもちょうど今日である。
本当にドンピシャなのだ。
せっかく僕がここにいて、助けられる位置にいるのだ。
助けてあげるべきだろう。
「いたっ」
ということで遠出していた王女が自身の護衛を伴って王都の方に移動している最中に通る森へとやってきた僕はそこで、魔物に襲われている王女たち一行を発見した。
「……間に合わなかったか」
王女たち一行は、サイドストーリーの主役であった女騎士とその主君である王女の他に、王女へと仕えているメイドに加え、女騎士とは別に五人の騎士も含まれている。
だが、既に王女の護衛である五人の騎士は魔物によって殺されてしまった後だった。
今の現状としては、五人の騎士を恐らくは爪の一薙ぎで葬った巨大なクマの魔物を前に王女とメイドを背にする女騎士が震えをこらえながら剣を構えているようなところだった。
「だが、最悪ではない」
五人は死んでしまった。
でも、まだ王女を含めて生存者が残っている。
僕がここまで駆けつけてきた意味があっただろう。
「ガァァァァァァァっ!」
「……くっ」
「だ、だめぇぇぇぇえええええええええええええっ!」
「王女様っ」
女騎士へとクマの魔物がその長い爪を伴う大きな腕を振るい、もはや諦めて目を瞑ってしまっている女騎士を殺そうとしているタイミングで。
「ど、っせいっ!」
木の上から様子を確認していた僕が飛び出し、クマの魔物へと渾身の飛び蹴りを加えて彼を吹き飛ばすことによって攻撃を受けて気絶するはずだった女騎士をすんでのところで救ってみせる。
「あ、貴方はっ!?」
「助太刀しますよ」
そして、そんな女騎士の隣へとそのまま降り立った僕は手より魔法で水を流しながら声をかけるのだった。
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