気持ちの良い朝

 街の中央部に堂々たる威容を誇って聳え立っている高級ホテル。


「ん、んんぅ……」


 そこの一室で僕はカーテンも閉めっぱなしにしていた窓から入り込んでくる朝日を浴びて目を覚ます。


「はぁー」


 朝、起きると共に大きく体を起こしてそのまま伸びを行った僕はその後、サクッと魔法で目の前に水球を作り、そこへと顔面を突っ込む。

 

「ごぽごぽ……ふぅー。さっぱりしたぁ」


 魔法があるとこうやって起きてすぐ、その場で顔を洗えるから便利だよね。

 紫外線とかも魔法があれば何とか出来るし。お肌のスキンケア系統も全部魔法で何とかなるし。何もしなくとも朝の面倒な時間が消えてくれるから本当に楽だ……えっ?髪?なんか知らんけど、ずっといい感じのところで髪は固定されるからセットとかは必要ないよ。

 マジで何で何だろうね?

 何故に僕の髪は常に固定されているというのだ。これがゲームのキャラだということか?


「さて、と」


 しっかりと朝のスキンケアを終えられた僕はそのままのそのそとベッドから這い出ていく。

 そして、ベッドから這い出た僕はそのままホテルの室内にあるテーブルへと向かう。


「いただきます」

 

 そのテーブルに置かれているのは昨日、前もって買っておいていた朝ごはんである。

 今日のメニューはサンドイッチである。

 それを僕は一人で食べ進めていく。

 うーん、やっぱりこのサンドイッチ美味しい。改めて思うけど、異世界の癖して飯がめっちゃうまい。一見の文明レベルは普通に中世から近世くらいなんだけどなぁ……普通に品種改良が進み過ぎている。


「ごちそうさま」


 今日も今日とてしっかりと食事を楽しめた僕は席から立ち上がり、ごみを捨て、寝室の方へと戻ってくる。

 再び来た寝室で何をするのかと言えば。


「そぉい!」


 未だにベッドで寝ぼけている自分の妹を起こすためだ。


「んにゃぁぁぁぁぁ」


 僕は同じベッドに眠っている自分がもぞもぞと起きて出てきた後もぐぅたらベッドで眠っているニーナから布団を強引にひっぺ剥がす。


「起きろ、朝だ」


「あ、悪魔ぁぁぁぁ!私の布団を返して、おにぃ!」


「返すか」

 

 そして、僕は自分から布団を奪い返そうと手を伸ばしてくるニーナとの不毛な格闘を始める。

 ちなみにこれは毎朝、僕とニーナの間で行われていることである。

 そんなもう日課となってしまったずいぶんと悲しく、空しい時間を送っていたその時。


「……ぁ?」


「は?」


 僕とニーナ共に、こちらへと向けられる敵意を敏感に感じ取って同時に警戒態勢へと移行するのだった。

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