冒険者
冒険者のランクは下から、E、D、C、B、A、S、の六つ。
Sランクというのは世界規模にまで広がっている冒険者ギルド内であっても数人しかいないため、基本的にはAランクが冒険者たちのトップという扱いになっている。
「私たちの方で遠視の水晶を通し、古竜を討伐なされたことを確認いたしました。これでカエサル様はAランク冒険者となります」
そして、僕はそんなAランクの冒険者として、ギルドの方から認定されたのだ。
僕は自分の前にいる受付嬢さんからAランクであることを示すタグを受け取る。これを首から下げていれば自分たちがAランク冒険者であることを一発で分かってもらえるわけだ。
「これでニーナ様と合わせてAランク冒険者となりましたので、お二人でAランクの依頼を受けることが可能となります」
「はーい」
ちなみにであるが、ニーナは僕よりも前にAランクの冒険者となっている。
「これでようやくおにぃも私へと追いついてくれたんだね?もー、遅いよ?」
「……仕方ないじゃんかぁ。僕はあの時、ちょっと体調崩しちゃっていたんだからぁ」
本当は、僕とニーナの二人でAランクに上がるための依頼であった不死王に率いられる死霊の大群の掃討依頼を受けていたのだが、ちょうどその日に僕が体調を崩してダウン。
ニーナに一人で行ってもらっていたのだ。それで彼女の方が一足早くにAランク冒険者となっていたのだ。
いや……でも、仕方ないじゃん?マジで体調悪かったんだって。めっちゃお腹下したんよぉ。下痢が止まらんかった。
僕はケツから大量噴射している様を多くの冒険者ギルドに勤める職員さんたちから遠くの地で観察されながら、死霊の大群と戦うことになっていたよ?
「でも、ちゃんとすぐに上がってきたからいいでしょ?本当はAランクの域には収まらない古竜をしっかりと倒してさ」
「そんなところで威張られてもねぇー?私が受けたのだって一人がやるにはAランクの域を超えていたよぉ?」
「……ニーナ様がそのお背丈よりもある大剣を振り回しながら魔物を壊滅させている様は圧巻でしたよ」
「んねぇー?」
まぁ、確かに……ニーナの戦闘スタイルはゴリゴリの近距離戦闘。魔法で自分の身体を強化して大剣を振り回すという信じられないくらい豪快かつシンプルで強い戦い方をするからなぁ。
普通にあの光景は圧巻だし、色々と信じられないものがあるよね。
「だからぁ、ざこざこなおにぃは私に対して威張らないの!」
「そもそも僕は君に対して別に威張ってないでしょ?」
「なんかそのスカした態度が嫌っ!もっと慌てふためて!」
「今度、致命的なタイミングで慌てふためこうか?遠距離攻撃を得意とする魔物の前とかで」
「うぇっ!?ちょ、ちょっと……それはぁ」
「あっ、受付嬢さん。これで自分たちはAランクの冒険者パーティーになったんでもう高難易度の依頼はありますよね?塩漬けされている鬼ムズイのでも依頼金が高ければ受けますよ」
「ちょっ!?さっきの言葉でその依頼チョイスは怖いよ!?おにぃ!」
「……一応はございますか」
「あっ、じゃあ、それをお願いします」
「おにぃ?」
「大丈夫、大丈夫。さっきのは冗談だから。実際はそんなことしないから」
「ほんとぉだよね?」
「本当だよ。というか、そもそも僕たちは金欠でヤバいんだから、そんな遊んでいる余裕もないでしょ?」
「……確かに、それもそうかも」
「でしょ?」
「それじゃあ、一緒に依頼のところに向かうよ。今日中に片を付けてお金に余裕を持たせるよ」
「だねっ!それじゃあ、行こうか。おにぃ」
今日も今日とて自分たちの日々の生活費を賄うため、依頼へと出るのだった。
「うわぁぁぁぁっ!?魔物が怖いぃ!?」
「おにぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいい!?結界でガン芋して悲鳴あげないでぇ!?私に攻撃手段がないから逃げることしかできないんだってぇぇぇぇぇええええええええええええ!?」
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