依頼後
安全であるはずの旅路に出てきたマッドイーターこと、土竜の魔物。
その事実はかなり重大なものであるが、それに対して当た目ふためくのは役人たちの仕事であり、ただの冒険者である僕たちの仕事ではない。
「それじゃあ、今回はありがとうなぁっ!依頼金!想定外のことが起きて、それにすら完璧に対応してくれたことも含めてちょっと色をつけといたわ!」
「おっ、ありがとっ!」
僕とニーナがやるのは冒険者ギルドへと報告を入れて報奨金を貰い、依頼主と別れの言葉を告げるだけだ。
「じゃ、じゃあ……それじゃあ、私は!」
今回の依頼主であったナーシャは僕たちと別れの挨拶を告げた後、そそくさとその場から去っていく……うーん、なんか、すっごい慌てていたなぁ。仕事の時間が押しているのかな?
土竜の魔物に襲われるなんていうアクシデントもあったし……。
もうちょっと早く倒してあげればよかったかな?
「おにぃ、おにぃ」
そんな風にナーシャのことを考えていた僕の服の裾を引っ張ってニーナが口を開く。
「こんなところで立ち往生している暇なくない?早く宿とか探したほうがいいでしょ?もう暗くなるよ?……それとも、おにぃはうら若き乙女である私をそのまま野宿されるつもり?」
「さすがにそれは不味い」
年頃……というには若すぎるような気もするけど、それでもまだ若い少女であるニーナを野宿させるわけにはいかない。
これは兄として、というよりも良識を持った人間であれば誰もが思うことだと思う。うん。
「えっと……一緒の宿でいいよね?」
「もっちろん」
「二人分の部屋がある宿なんてあるかなぁー?」
「おにぃの甲斐性で私をちゃんと楽させてねっ!にしし」
「おー、まかせぇ」
兄としてそこらへんはしっかりと任せてほしい。
「まぁ、高いところに行けばあるやろ……格好もそれの為みたいなところあるし」
僕の着ている服装は地味ながらも質は良いし……ニーナに至ってはもう冒険者を舐めるとしか思えない、ガッツリとしたドレス姿である。
この格好であれば高級ホテルの方に行っても浮くことはないし、門前払いもされないだろう。
たとえ、子供二人であったとしても。
「んじゃ、いくかぁー」
僕は高級ホテルの方へと足を進める。
「どこにいけばいいのかわかるの?」
「サクッと魔法でここら一帯を既にサーチ済みだから、何処に何があるかも完璧にわかるよ。宿をとったら夕食の方も食べようか」
「おー、ざこざこおにぃのくせにやるじゃん」
「ざこは余計な?」
僕は自分に対して生意気な発言を繰り返すニーナを軽く嗜めながら、二人でホテル街に行くのだった。
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