メスガキ妹
「うぅぅ……」
一向にパーティーメンバーの出来る気がしない僕は机に顔を突っ伏し、うめき声をあげていた……いや、マジでどうしよう?僕の貯金もそこまで多いわけじゃない。
ほ、本気で仕事をしないと不味いんだけどぉ。
「ねぇ、おにぃ?」
ガチで頭を抱えて固まっている僕の耳に、とある女子の声をが聞こえてくる。
「……はぁ?」
聞こえてきたその声。
それが信じられなかった僕は反射的に、勢いよく視線を上げる。
「わぁ~、仲間も作れずボッチなおにぃがこっちを見てくるぅ」
「なんでお前がここにっ!?」
僕が視線をあげ、それで視界に入ってきた人物。
それは自分の妹であるニーナ・アイランクであった。
「えぇー、仲間も作れないよわよわおにぃの為、駆けつけてきた愛する妹にそんな言葉つかっちゃうぅー?」
「いやっ!僕とは違って、お前はあそこから追放される理由なんてないだろっ!?何でお前がここにいるんだよっ!」
僕はこちらへと、いつものように挑発的な言動を繰り返すニーナに対してただただ驚きの声を返していく。
「……い、いや、そんなに私のことを否定しなくてもいいじゃん。おにぃ。素直に私が駆けつけてきたことを喜んで!」
「いやっ!?喜べるかいっ!?……本当に何でお前がここにいるの?」
いやいや、……いやいや、本当にありえなくない?
追放された僕がここにいるのと、追放されるはずもないニーナがここにいるとのではその意味が大きく変わってくる。
「私がこっちに来たかったからに決まっているじゃん。おにぃ。そんなこともわからないの?」
「いや、それが何で?って言いたいの。あそこの家にいたままならお前は何不自由のない、安定した生活が送れるんだよ?」
「本当にそう思っているの?おにぃ。うちの家はそこまで安泰じゃないじゃん」
「……いや、そこまで深刻でもないだろっ」
確かに、アイランク家の土台はそこまで確固たるものでもない。
だが、別にそれでもアイランク家は高位の貴族である侯爵家なのだ。こんな市井に出て冒険者になるよりは遥かにマシだ。
僕は前世の記憶を持っている特異個体ではあるが、それでも自分の家族。
結構生意気なところがあるとはいえ、それでもニーナは僕への殺意などは持っていない可愛い妹だ。
妹に冒険なんてせず、安定した生活をもって幸せになってほしいという兄心を持つのは至極当然……っ!何があってもおかしくない市井にニーナを放流するのはあまりにも危険すぎる。
「でも、おにぃ。いくらここで言い合っていても私はもう家を出ちゃったんだよ。もう何があっても帰れないよ?そんなこともわからないの?やっぱりおにぃはまだまだ頭よわよわなんだねっ!」
「余計なお世話じゃいっ!……いや、でも今からならまだ帰れるだろう」
「私は帰るつもりないもーん。おにぃが私を家に帰してくれてもいいよ?おにぃが出来るのなら!だけど」
「ぐぬっ」
それは、……それは無理だ。
僕がニーナを家に連れて帰ったりしたら、もう彼女の立場は最悪になること間違いなしだろう。
追放した嫡男を追って家を出た長女など、厄ネタとしかならない……もう、無駄に頭回しやがって。未だ10歳とは思えない頭のキレの良さだよ、まったくもう。
「私はもう家を出ちゃったし、帰るつもりもないよっ!このまま私を一人にさせる、なんていくらよわよわのおにぃでもしないよねぇ?だからぁ、せいぜい私のことを良く守ってね?おにぃ」
僕が頭を抱えているの対し、ニーナは呑気な笑みを浮かべて口を開く。
「それじゃあ、一緒のパーティーになったって報告しにいこうねぇー、おにぃ!」
「……あぁ~っ!?もう!」
そして、意気揚々と受付の方に向かっていくニーナを前に、僕はもう色々なものを吹っ切って彼女を追いかけるのだった。
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