「えっ~!?一人では冒険者になることは出来ないんですかっ!?」


 意気揚々と冒険者ギルドを訪れ、冒険者になろうと受付のところに向かった僕は早速大きな壁にぶち当たっていた。


「いえ、冒険者になることは出来るのですが……単身で依頼を受けることが出来ないのです。初めのうちに一人で依頼をこなすのは色々と問題がありまして」


「……そ、それは結局」


 依頼を受ける。

 それ以外に冒険者となる理由はないのに、依頼を受けられないのであれば結局のところ冒険者になれていないのに同義なんだがっ!?


「いつでもパーティー登録は可能となっております。この場には数多くの冒険者がいますから。同じパーティーを組んでくれる人を探すなり、誰かのパーティーに入れてもらうなりすれば問題ありません」


「な、なるほど……」


 つまりこれから僕は同じパーティーメンバー探しに出なければいけない、ということですか???……なんか、自分の後ろにいる冒険者たちってばゴリゴリマッチョのいかつい人たちばっかであまり話しかけにくいのだけどぉ。

 見た目はごつくない女性たちに話かけるのも話かけるので難易度はしっかりと高いしぃ……うへぇ。頭が痛い。

 僕は根が陰キャなんだぞぉ。初対面の人に話しかけるだけでも難易度が高いのにぃ。


「……申し訳ありません。規則ですので。初心者のおひとり様には依頼を受けさせることは出来ないのです。どうかご容赦いただけると」


「わ、わかりましたぁ」


 く、くそぉー、想定外だ。

 そんな規則、ゲームには出てこなかったぞ。

 まぁ、確かに一人で行動している初心者の冒険者はいなかったけどぉ……くぅ、こんなところで足もとを掬われるなんてぇ。


「……頑張って探していきます」


 だが、これが規則だというのならばどうしようもない。

 僕は肩を落としながら、仲間を探すために冒険者ギルドの内部へと視線を向けるのであった。


 ■■■■■


 僕は頑張った。

 陰キャなりにも頑張った。

 大いに頑張ったと思う。


「……詰んだ。誰も僕とパーティーを組んでくれない」


 でも、駄目だった。

 一時間ほど頑張って多くの冒険者に声をかけ続けた。

 だけど、だけど、だけど……すべての人が僕から声をかけられるなり、すぐに逃げていってしまうのだ。

 もう、本当にそそくさといなくなってしまうのだ。

 こんな、こんな悲しいことがあるかよっ!?


「うぅ……なんでぇ」


 僕は冒険者ギルド内に併設させている酒場の椅子に座り、机へと顔を突っ伏しながら涙を流す。

 仕事を、仕事を探すとはこんなにも過酷なことなのかぁ。


「あぁぁぁぁぁぁ」


 

 ……。


 …………。


 なお、カエサルが仲間を見つけられない最大の要因はその服装にあった。

 この時のカエサルの格好は未だ貴族に在籍していた頃、自分が追放された時のために用意していた地味めな服を着こなしたものとなっている。

 カエサルは地味めものを選んでいるので目立つことはないと楽観的に考えているが……いくら、地味めなものをチョイスしているとは言えど、それでも貴族御用達の店で買った服の質の圧倒的な良さはごまかせない。

 彼が明らかに貴族家の生まれであることは簡単にわかってしまう。

 目に見えて貴族家のボンボンといった様相のカエサルと同じパーティーになるなど火中の栗を拾うと同義。

 あまりにもリスクがありすぎる貴族のドラ息子と同じパーティーになるという選択をこの場にいる誰も取らなかったのだ。

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