冒険者ギルド
自身の誕生日会で己の生家からの追放を宣告されたその次の日。
「ん、うぅんー」
これまでちまちまと追放された時のことを見越した貯めていたお金を用いて、自分の家の領地から遠く離れた地で宿をとっていた僕はそこで朝を迎える。
「良い朝だ」
これまでの自分の人生では考えられないような粗雑なベッドから這い出た僕はカーテンのない窓から太陽の日を浴びながら体を伸ばす。
「えっと……まずは金策か」
貴族家から追放された今の僕にはやるべきことが多い。
いくらお金を貯めていたとは言っても、そこまで多くはない。しっかりと働いて自分の生活を送れるようになる必要がある。
「……動きますかぁ」
体を十二分に伸ばし終わった僕は早速行動を開始し、宿から出るのだった。
■■■■■
心地のよい太陽に包まれた朝の街。
そこは既に喧騒に包まれていた。
「おっちゃん、串焼き一つ」
喧騒に包まれる朝の街の大通りに立ち並ぶのは多くの露店。
それらのうち、一つの店の前に立った僕は串焼きを焼いているおっちゃんへと一本注文する。
「あいよ」
「ありがと」
代金を支払った僕は朝ごはんとなる串焼きを受け取り、そのまますぐに口へと運ぶ。
「んー、うめぇー」
ちょっと血抜きが甘いような気もするが、それもまぁ、気になったりはしない。
うん、しっかりとスパイスが効いていてうまい。
「はふっ、はふっ」
僕は串焼きを頬張りながら自分の目的地の場所を探していく。
えーっと、僕が行きたいのは冒険者ギルドだから……いや、何処だ?
かなりの人が行き交い、多くの道の分岐がある街の大通りに立つ僕は何処に自分の目的地である冒険者ギルドがあるのかわからず途方に暮れる。
「ったく……二日酔いで頭いてぇ」
「何してんのよ。今日は依頼を受ける日だって言っていたわよね?」
「楽な依頼がいいなぁ」
「金が大事だろ。金、金。俺は借金ヤバいんだよ。頼むから金が得られるのにしてくれ」
「……うちの男陣は何でこんななの?」
そんな僕の前に、色々な装備で武装した冒険者と思われる一団が通過していく……ラッキー、あれについていけば冒険者ギルドにいけるでしょ。
「……うし」
串焼きに刺さっている最後の肉を頬張った僕はこっそりと自分の前を通っていった一団を追いかけていく。
「……ここか」
歩いていた時間は本当に僅かであった。
僕はすぐに冒険者ギルドと思われる建物へとたどり着いた。
「あるといいなぁ、良い依頼がよぉ」
「なぁ」
僕が追いかけていた一団が建物に入っていったので、今、自分の前にあるこの大きな魔物が冒険者ギルドであることは間違いないだろう。
「おー、ゲームで見たところそのままだ」
冒険者ギルド。
それは、冒険者に仕事を斡旋すると共に支援までも行ってくれている組織。
冒険者は基本的に誰でもなれるものなので……この冒険者ギルドは基本的に前世のハローワークのような立ち位置の組織となるだろう。
「っごく」
僕はそんな冒険者ギルドに入るためのドアの前で息を飲み、僅かながらの緊張をもって扉を開けるのだった。
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