第2話 サ行の魔

 ……!?


 とてつもない違和感が体を覆った。


 異界に来たのも束の間、神が言ってたことを理解できたのだ。


 考えることも、口から声をあげることもできない……!


 あの行が使えないからだ


 とりあえず俺は辺りを見回『』……ダメだ、あの行が使えないから言葉を連ねるだけでつっかえる。


 これは参ったぞ。


「ん……?」


 向こうに明かりがある。村だ!今が夜でよかった。


 俺は勢いよく駆け抜け、村へと一歩一歩近づいていくのだった。


 村へ着くと、1人の女が歩いてるのが見えた。

 

「あの……」


 俺が声をかけると女はこう答える。


「あなた、見ない顔ね。ここの村の者ではないわよね?」


「あ……はい……その……宿を……」


 く……陰キャの俺にとって人との会話はとてつもなくハードだ……


 あの行が使えないのもあるが……


 結局会話が通じることはなく、女はハテナマークを顔に浮かべながら帰って行った。


 こんなんで本当に異界に適応できるのだろうか……

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サ行を使えない俺が異界に落ちる @miyabi4659

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