第22話 オールレビュー④

 清水らくは「母との永劫回帰」https://kakuyomu.jp/works/16818093081189382759


 母に対しての悔やみの念(なにもしてあげられなかったというような)から宇宙をやり直しする人間の物語。引用「彼らも、どこかの世界で研究したのだろうか。それとも、偶然なのだろうか。とりあえず、私たちの感じる「神秘性」には根拠があったのだ。だが、そんなこともどうでもいい。私は、まずはこの世界、母の死んだ世界には終わってほしい。


 何百年か過ぎて人間が滅び、何億年か経って生物が滅びた。星が終わり、銀河が終わり、そしてついに宇宙が終わる。神々は、収束する世界を見つめている。そしてただ一点となり、ついに……次の世界が始まる。」SFアイデアとして見るべきところが多い作品。停止をさせるための観測装置。全能の神になることで再び永劫回帰世界を見るなど、また宇宙像も魅力的だった。宇宙論でいうところの親宇宙、子宇宙といった繋がりある永久インフレーションを思い起こさせるし、こうしたアイデアに支えられていて、佳作の予感がある。


 鳥辺野九「オーバードープでブランチを」https://kakuyomu.jp/works/16818093081304415256


 ドラッグ中毒の主人公がドラッグを止めようとする。デトックスには何が必要か。引用「「クスリ抜きだ。クスリを断って三日も経てば、脳みそもクリア極まって凪の鏡面よ」




「あんたが満足ならそれでいいんじゃない? 青白い顔しちゃってさ。ちゃんと食ってる?」




 午後のファストフード屋はそこそこ混んでいて、みんないそいそと政府支給のクスリ漬け食べ物とクスリ入り飲み物を体内に取り込んでいる。


 クスリ漬けの加工肉を咀嚼してクスリ入りの炭酸飲料でまとめて嚥下するコフユと、生野菜ドレッシング抜きを食べる私と、どっちが顔色悪いかって国民投票するまでもない。




「コナツもジャンクとかコンビニフードとかもうやめな」




「あたしはミフユだ。どこの女よ、コナツって」中略「安心して食べられるのは調理されてない野菜と果物だけ。ドレッシングもヨーグルトもクスリが入ってる」




「まるで頭の悪いヴィーガンだね」




「クスリ漬けで政府の操り人形になるくらいならそれもいい」


 」ドラッグ的感覚とSFは切って切り離せない。というのはドラッグ=SFだったという時代があるからだ。カヴァンやディック。この小説では会話が素晴らしいと感じた。場面の切り取り方に上手さを感じるのだ。短い中に世界観を感じさせてくれる文章がある。オチも含めて良いと思う佳作。

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