第23話 オールレビュー⑤

 藍﨑藍 「陽の宿る場所」https://kakuyomu.jp/works/16818093081740266060


 塩害に悩まされる土地で人々は東を目指す。引用「世界は塩にのみこまれた。人が到達したこともない東の果てには、まだ塩にのみこまれていない場所があるという。




 東へ。東へ。人は陽の宿る場所へと進みつづける。




 しばらく足元を見たまま歩いていると、一人の老人がすわりこんでいるのが見えた。父と娘に気がついたのか、老人はつかれた表情で手をあげる。どうやら動けなくなったらしい。父は娘をおぶったまま、やるせない思いで会釈した。




 このあたりが「死の谷」とよばれるのにはわけがある。東に進めば進むほど、文明地から遠ざかるからだ。人もおらず水や食料もない場所で動けなくなれば、待ちかまえるものはただ一つ。」事実を淡々と述べながらそこに浮かび上がる風景がひたすらに美しい作品でした。1000字という短さのなかで一つの場面でしたが、もう少しこの世界を様々な角度から見てみたかったと思わせました。塩害の街というと有川浩の「塩の街」のオマージュでしょうか。


 Tempp @ぷかぷか「玄関の先が行方不明」https://kakuyomu.jp/works/16818093081900686377


 入れ替え可能の玄関の先はどこへ行った? それは近未来の怪談か? 引用「やはり俺の部屋ではない。けれどもこの鍵で開くということは、ここは俺の部屋のはずなのだ。


 ……そうだよな?


 不法侵入者?


 確かめなければならない。一刻も早く布団にダイブしたい。


 意を決してインターフォンに手を伸ばす。


「はい、どちら様ですか。宅配は頼んた記憶はないけど」


 見知らぬ落ち着いた声。


 宅配を頼む。ということは、声の主の部屋なのだろう。


「あの、そのですね、私の鍵であなたの家の扉が空いてしまったのです」


「はぁ? まさか」


「本当です」」一見すると何が起こっているか分からない。その分からなさが興味を引く設計となっている。どうやら未来の部屋は異次元にあるらしい。情報出しに少しストレスを感じたが、SF設定から謎を引き出すところは面白い。絵が浮かぶ作品なのでコミカライズに向く作品ではないだろうか。

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