透明な真実

しげまつ

プロット。自分用

※全部むちゃくちゃ設定

※いろんな表現注意


アメリカ・ミシガン州ウェイン郡の検察官レオナルド・ツヴァイフェル

・犯罪率高い地域での最終判決を下す検察官

・年若い美しい検察官。冷静沈着

・弁護士泣かせ。どんなに罪を軽くしようと完全論破してくる

・証拠に基づく真実以上の価値を求めない


デスクで仕事をしていたレオナルドの下に電話がくる

検事総監から依頼

犯人は若い女性

正当防衛によって旦那を撲殺

親権→旦那の財産狙い

彼女を利用した者を炙り出す


「以上です」

→傍聴席に来ていた記者が絶賛

しかし、なぜあれほだの情報を彼は持っていたのだろうか



第2話

レオナルド・ツヴァイフェル

オクスフォード大学首席

飛び級で大学卒業。21歳で検事に

検事長に褒められる

アメリカのデトロイトに移籍

犯罪率の高い町で数を上げて出世をねらう

副検事のカルロ。オネエ

「早速だけど、お仕事よ」

→資料が少なすぎる。検事が現場に赴くのは御法度

知り合いに電話しようとするが、引っ越しの荷物で忙しいのを理解しているから気が引ける

とりあえず、警察署へ言って挨拶しにいく

警察たちの様子。警察というより賭博場

周りの視線がすごい。こそこそと噂されているが気にしないようにする

音も蓋もない噂は学生時代からされているのを知っている。気にしないほうがいい

署長と挨拶。でかい男。ジフ

「現場の監督は誰が?」「ホセって警部補だ」


「こんにちわー」

呼んでないのにやってくるパンダという東洋人。

先週からこちらに配属になった男。

にこにこしてる。


「現場を見てみたい。少し気になるところがあって」

→現場へ

すっかり片付けられている。床の傷や血の跡を見るレオ

ため息。これは難しい

写真を撮る。少ない手がかりを使って推理する

ほぼ間違いないが、証拠がなければあくまで推論。

たらればの証言で人を裁くことは出来ない


次の日。パンダがレオのデスクへやってきた。

「検事がほしい情報、俺が持っとるかもしれん」

「なぁ検事。噂で聞いたんやけど、検事は情報を持ってくる奴にごほーびこれるんやろ?」

睨むレオ。こいつもそういう男か。と

ため息。しかし、どんな情報でも自分の推理を計り知るためには必要だと理解していた。

→ホテルを取る。デトロイトから出た街にあるホテル。


第三話


先に部屋の中で待つパンダ

紫の銘柄のタバコを吸ってふぅーっと長く煙を吐き出す

仕事を終えてやってくるレオナルド

パンダにシャワーを浴びるように伝える

レオナルドはスーツのジャケットを脱ぎ、ハンガーにかけてネクタイを緩める

シャワーを浴び終えたパンダをベッドに座らせ、下腹部に目線を合わせるように座り込む

→主導権はレオナルドが持つ。自分の体は触れさせない


文句を言わないパンダ

ウェーブかかったレオナルドの髪を撫で、じっとするがままにさせてる

ごくん。レオナルドの喉が動くと終了の合図

「もう終わりなん?」「お前が本当に役に立つ情報を持ってくる男ならこれ以上もあるかもな」

ハンカチで口元を拭き、パンダから手渡された資料に目を通す

驚く。これ以上に丁寧に的確な情報を持ってきた人間はいなかった

現場を捜査した警察からの資料とは比べ物にならない。そしてその資料は、レオナルドが現場に残された僅かな傷から浮かべていた推理をすべて立証するものとなっていた

後ろからレオナルドを抱きしめるパンダ

そっと耳元に口を寄せ、低く響くような声で囁く

「なぁ。俺、ええ子やろ?」

パンダの手が伸びてくるが、その手を掴んで拒む。

主導権は渡してはいけない。だが、有能なクライアントになりうる男の機嫌を損ねるのもいけない。

「もっかい触ってや」



第四話

翌朝。デスクで資料を確認し、事件をまとめるレオナルド

コーヒーを空の胃に注ぎ込み、寝不足をごまかすようにして頭をフル回転させる

しかしパンダからの資料は有益すぎた

あらかたまとめ、カルロに声をかけて留置所から容疑者となっている男を連れてきてもらう

「貴方を起訴します。連続殺人の真犯人として」


警察からの資料では、ただひとつの殺人事件の容疑者として逮捕された男であったが

5年前の連続殺人と同じ手口が取られていると証拠より割り出すことができた


裁判にて

弁護人は彼が記憶喪失であることを訴えてくる

五年前の事件も、犯人は現場で自殺したとして処理されていることを提示

しかしレオナルドは自殺は他殺であり、犯人とされていた男は真犯人の共犯者だったと言う

記憶を無くした男と共犯者だった男の真相を話し、男の証言からそれを立証する

ざわつく法廷。弁護人にひとつ質問をする

その質問への答えにより、弁護人もグルだったと明らかになる

「裁判長。閉廷を希望します」


閉廷後、疲れ切ったレオナルドはソファーに沈むようにして座り、メガネを外して目を閉じた

「お疲れ様。少し仮眠とったら?昨日は寝れてないんじゃないの?」

カルロの言葉に理由を尋ねる

「あの警部補と会ってたんでしょ。カバンについちゃってるあいつのタバコの匂い、アメリカじゃ流通してない種類のタバコだから」 

ホテルに持っていったカバンに匂いがついてしまっていたのを悟られた

あの後すぐに帰り、シャワーを浴びてもらった資料を読み込んでいたら朝になっていた

スマホが鳴る。画面を見ると未登録のメールアドレスからメール

『おつかれさん。五年前の連続殺人事件の資料、作ったけん夕方届けにいく』

パンダがいつの間にか自分のスマホを触ってメルアドを取っていたことを悟った

はぁとため息をついて、ソファーの上に横になった

寝不足で頭が痛かった。腹は空いていたが、なにかを食べる気にもなれなかった


第五話

スマホが鳴る音で目が覚める

30分ほど仮眠していたのを見て取り、スマホを覗き込む

そこにはエヴァという名前の表示と着信

レオナルドは電話を取った

『お。おつかれさん』

優しい声。レオナルドの目元がほっと緩む

幼馴染の男エヴァ。レオナルドの大切な友人

レオナルドの身を案じるエヴァ

『お店、無事にオープンしたさかい、いつでもおいで』

今夜、さっそく行くと約束

電話を切ってから机に向かう

ノックの音。パンダがやってくる

「いやー。すごかったのう。弁護士たじたじじゃったわ」

「傍聴席でやたら笑いかけてくる男がいると思ったが、来てたんだな」

「そりゃもちろん!俺がたくした情報を余す事なく活用してもらって感動した」

あっぱれじゃ。と笑うパンダ

大きな封筒を手渡す。約束の資料

「必要そうな情報は全部入れとるよ。パンダさんのおすすめスポットもついでにいれとる」

封筒から資料を取り出し、目を通すレオナルド

見やすくわかりやすい資料。レオナルドの思考を完全に理解した情報。

「今日の裁判聞いてて、こういうのが好みやろうか。ってもん全部ぶち込んどるわ」

「時間がかかっただろう?」

「まあのう!こないだ、ホテルで別れてからすぐまとめはじめて今の今までかかったわ」

ホテルのことが思い浮かぶ

結局、パンダを満足させてた後、レオナルド自身は服を脱ぐこともなく部屋から立ち去った。

「それにしても俺のをしごいてそれではい終わりってのはのう…。ばあちゃんに肩叩きする子供のほうかよっぽど利に合っとる報酬もらえるわ」

「…」

「なあ。今までもあんなこと、情報くれるやつにしとったんか?」

ソファーにふてぶてしく座りながらパンダは尋ねる

レオナルドはパンダに目もくれず、本棚の資料を取るために立ち上がりファイルに手を伸ばす

「お前で二人目」

その言葉に目を丸くするパンダ

レオナルドはファイルを開いてページを捲る

「一人目は最初の‘あれ’で満足してくれたんだがなあ」

机に座り直し、レオナルドは引き出しから小切手を取り出し、値段とサインを書いてパンダに差し出す

「資料に見合った報酬は出す。お前が望むのなら、これ以上の額でもなんでも払ってやろう。ただし、あっちの方法は不慣れな故、あれ以上はできんぞ」

小切手にはかなりの額が記されている

パンダはむっとした顔でレオナルドを見上げ、小切手を手に取った

「…こんな額もらいたくて資料渡してるわけやないぞ」

「だが、情報に見合った報酬を求めたのはお前だったろう?私も、その額を払うだけの価値をお前の情報から感じている。ビジネスだ。そうだろ?クスノセ警部補」

パンダとは彼のあだ名である。

本名はヒグレ.クスノセ。

むっとしたパンダははぁ、とため息をついてから「またくるわ」といって部屋を出ていった


第六話

エヴァの店にやってくるレオナルド

エヴァの作ったサンドイッチが大好物

「もっと栄養もあるもん、食わなあかんよ」

わかっていると返事はするが、わかっているのか。

食に対しての関心がないのは昔から。

エヴァとゆったりした時間を過ごす。

同じ孤児院の出身同士。年が近い為ずっと仲良し。

新しい検事局の話。

デトロイト市警の話、パンダの話になる。

パンダに手渡された資料をエヴァに見せる

「すごいやん。市警がこんな情報持ち込んでくる事めったにないやろ。多分こいつ、裏で情報屋雇っとんのとちゃう?」

エヴァは探偵。レオナルドにとって最も信用できる御用達。

いつも情報収集はエヴァにやってもらっていた。彼にわざわざデトロイトにまで引っ越してもらったのもそのため。

「お前の考え方の系統とか全部理解して集めて来とるな。欲しいもん全部手ェとどいとるやろ」

「まだ出会って数日で、ここまで寄ってくるのも単純に怖い」

かぼちゃのポタージュを飲みながら答えるレオナルド。

「こいつは何をお前に要求しとるん?」

「…」

エヴァには言えない。新しい場所で情報が少ない中、むしゃくしゃしていたからホテルへ行ったこと。こういう情報の買い方を、エヴァは本当に嫌がるのを知っている。

「とりあえず、金は払った」

「変なもん要求してこんかったらえぇけどな。とにかく何が何でも、自分の事は大事にせなあかんよ」

弟にするように頭を撫でてくるエヴァ。頷くレオナルド

しっかり食べて、レオナルドは自宅へ帰る。

高層マンション。セキュリティーだけ選んだ殺風景な部屋。

全く使っていないキッチン。コーヒーメーカーのみ。

ただっぴろい部屋に仕事机とソファー。奥の寝室と、となりの部屋には大量の新聞記事と赤い糸が張り巡らされた不気味な部屋。

レオナルドは、誰かを探している。


第七話

土日は休日。

休日の日はひたすら不気味な部屋に閉じこもって真実を探しているレオナルド。

行き詰って、コーヒーを飲む為キッチンへ。

スマホに着信。

「ハロー!なにやっとった?」

パンダからの電話。別に、と返事を返す。

コイツ、俺の電話番号まで盗んでやがったのか。

「なぁなぁ。ランチ一緒に食べに行かん?俺もまだこっち来てそんな経ってないから色々好きな店さがしたくてな」

「ランチ食べる予定はなかった」

「いかーん!そらいかん!ご飯は体の資本やないか」

折角の休みなんだから、色々調べたい事もあるのに。とイライラするレオナルド

「なあ。何食べたい?ハンバーガー?ピザ?もしかしてヴィーガン?」

「ジャンクフードはあまり好きじゃない。ヴィーガンでもない。私は今日、家から出るつもりはないから、他のやつと楽しんできたらどうだ」

電話を切るレオナルド。

コーヒーをマグカップに入れて飲む。そろそろコーヒーもストックが切れそうだと気づく。ネットで注文しようとスマホを触っていると、インターフォンが鳴る。

パンダが大きな買い物袋を持ってやって来た。

「俺が作ったる」

入れてくれないとエントランスで料理し始めるといいだすので、仕方なく部屋に通す。片付けるも何も、なんにもない部屋なので変にうろうろする

部屋にやってくるパンダ。キッチンに入ってくる。

「…店を探すつもりじゃなかったのか?」

「それはいつでもできるからのう。それより自分の上司が栄養失調で倒れてしまうんが良くないわ」

勝手に冷蔵庫を開けて喚く。なんにもないやん!なに冷やしてんねん。からっぽの容器冷やしても期限伸びたりせんぞ。とか

うるさいなぁ。と思いながらソファーに座る。

「俺な、こう見えて料理得意やねん。おいしーへるしーなもん作ったるからなー」

調理器具はそろってる。エヴァがたまに来て料理を作ってくれるから。

ずーーっとしゃべってるパンダの話を半分聞き流しながらソファーでうとうとし始める。料理をしている音を聞くといつもなぜか眠くなってくる。

うたたねしていたら、料理が運ばれてきた。バケットと付け合わせ色々

「パンの上に乗せて食べるんや」

いただきます!と手を合わせて食べるパンダ。食べる気はなかったが、見てたら少し食欲が湧いて来たので味見程度のつもりで口にする

美味しさに目を丸くする。

「味の好みまで調べてきたのか?」

「え!そんなに気に入ってくれたん?うれしいわー!」

どうやらたまたま自分好みの味付けだったようだ。

褒めてしまう形になってしまってどうにもむず痒い

食べている姿を真横で嬉しそうににこにこしながら見つめられるのが気になってしかたない。

「…お前、仕事は?」

「ランチ休憩やから大丈夫じゃ。さっきまで事件現場行ってたんやけどなあ。ある程度現場捜査はすませたから、あとは色々まとめて検事に渡すからなあ」

待っとれよ。と、頭をなでてくるパンダ

「ほあー。やっぱり柔らかくてきもちいなぁ。検事の髪の毛」

あのホテルで髪を撫でられたのを思い出す。飯が急に不味くなる。水を口に含んで、口の中にまだ残ってるあの日の感覚を飲み下した。水なのに苦く感じて眉をしかめた。

思い出した?といたずらっぽく笑うパンダを一度じとりと睨む

「なあ検事。やっぱり検事、ほんまは自分の身体売って情報手に入れるん、あれがはじめてやったんとちゃうか?」

「…」

ぐっと顔を近づけてくるパンダに、思わず身動いだ。

「それどころか、そういう事に対して嫌悪感さえ抱いとる。苦しそうやったもんなぁ」

「…」

「昔、なんかあったん?」

ザザッと、フラッシュバックのようにレオナルドの過去の出来事が頭の中を駆け巡る。

ぞっと背中に悪寒が走る。だが、検事というものは動揺を悟られてはいけない。

括弧とした精神と言動を示さなければならない。

音を立てないように深呼吸をして、一度ゆっくり目を閉じて目を開ける。

「…お前に、そう思わせるほど私は下手だったようだな」

さすが検事。話術では勝てないか。

パンダはうーん。と困ったように苦笑して頭を掻いた。

「あんな。わし、考えたんじゃ。“ご褒美”。やっぱ金をもらうってのがあんまり嬉しくないんじゃが」

「…」

「今度から、キスさせたって」

「は?」

目をまん丸にして驚くレオナルド

パンダはなぜか照れたように熱弁しはじめる。

キスはいいぞ。と

本当にそれでいいのか?と聞くと、それでいい!と大きくうなづくパンダ

よくわからないやつだ。と返事をしないでいたら、そんじゃ!今夜さっそく資料持ってくるからそん時ちゅーしてな!と張り切って出ていった

嵐のようなやつだな。と、レオナルドは頬をかいた

電話の着信音。カルロからの電話

『お休みのところごめんなさいね。急ぎの事件なの』


第八話

アメリカの政治家の息子が犯したとされる銃殺事件

風俗で指名した女性を襲った事件

部屋のパソコンから事件の概要を見る

有名政治家の息子。カルロが言うには不起訴か。もしくは刑罰を軽くするようにという上からの圧力があるということ。

提出された証拠品の数も不自然に少なく、アリバイも不自然

しかし、司法は行政より独立した組織であるべきであり、たとえ国で偉い政治家だからという理由があろうともおなじ一人の人間として裁かなければならない

…とはいえ、それはあくまでも表向きの姿

癒着した司法の委員も少なくはない

ため息を吐きながら、椅子の背もたれに沈む

有名政治家の事を調べてみる。エリート街道を歩いてきた支持率の高い男だった

無罪を勝ち取る以外、彼と彼の息子にかけられる悪いイメージは払拭されることはない

いや。むしろもう手遅れだろう

弁護士も厄介なのを連れてきそうだ…。そう思うとすでに憂鬱だった

電話。パンダから

『あと一時間ぐらいしたら、またそっち行くからなぁ。検事、ビールとか飲めるか?』

憂鬱を拭うためにも、少し飲むのもいいかもしれない。ワインなら飲むと伝えると電話越しに楽しそうな声が聞こえた。


1時間と言わずに、パンダはすぐにやってきた

まさかのマイエプロンまで持ってきて、色々と調理器具や調味料まで買い足してきた。

料理しながら情報について話をする。と言って先に資料を渡してきた。

レオナルドはソファーに座って資料を見る

カルロから来た情報とよく似た情報もあれば、さらに深く調べたものまであった

話しながら、パンダの知る情報を聞く

ぴたり、と。ジョシュアの動きが止まる

「…息子は、父親とは別居状態なんだな?」

「それは確かじゃ。息子の方はデトロイトに住んでて、父親は別の街に住んでるよ」

「…父親は事件当時どこに?」

「自宅の私室におったって言っとるなあ」

「それを証明する人は」

「専属運転手の証言のみや」

「…」

ミートローフとワイン

二人でソファーに並んで座って食べる

色々と話をしていると、ワインが思いの外進んで酔いが回ってくるレオナルド

「検事はイギリス人じゃろ?アメリカ英語うまいけど、酔ったらあっちのアクセントになるな」

「…お前は、かなり訛ってるな…いつからアメリカに?」

「9つん時やな。兄貴がおんねんけど、兄貴と出稼ぎでこっち来たんじゃ」

仕事以外の話がぽつり、ぽつりと出てくる

ぼんやりした頭が、断続的にパンダの事を記憶していく

今は、事件の話はしたくなかった。少ない証拠が、逆に嫌な推測への鍵を開けてしまった事から目を背けたかったからだ

パンダが片付けをする。ワインの残りを飲みながらレオナルドは資料をまとめてデスクの方へ置いた。

さらさらとメモを残そうとしたが、酔いのせいでうまく書けていなかった

「検事。おいで」

洗い物を済ませたパンダがソファーにすわり、とんとんと自分の膝をたたく。

パンダの前に近づきはしたが、素直に膝に座る気にはならない

「また頑張るけん、ごほーびちょーだい」

「ごほうび?」

すっかり忘れていた、えっと…?いくらだったっけ?

パンダはレオナルドの手からワイングラスを取り上げ、テーブルに置いてレオの手を引き、自分の膝に座らせる

向かい合わせになって座り合うが、レオナルドは酔いが邪魔して抵抗しなかった。それどころかまだ理解できていないようでぼーっとパンダを見下ろしている

ふっと笑い、パンダは首を伸ばして下からレオナルドの唇にキスをした

自分の唇に感じた感触がなんだったのか。推理しているのかレオナルドは難しい表情を浮かべながら何度か瞬きを繰り返す

ぐっとレオナルドの腰を自分に引き寄せ、その両手を持って自分の首の後ろにまわさせる

うっすら空いてる唇にまた唇を重ねる

今度は少し、くっつけたままその感触を確かめる

ほぅ、とどちらかの息が漏れ出た

たくさん飲んだなぁ。とワインの匂いに笑いながら、パンダはレオナルドの唇をはむ、と軽く自分の唇で挟んで引っ張るようにして離す。

ようやくレオナルドは自分がキスをしていることに気づいた。だが妙に冷静だった。あ。今キスしてるのか。そっか…と思うだけで、嫌悪感が生まれるまでには頭の回転は通常通り働いてはいなかった

「危なっかしいのう」

パンダの手がそっとレオナルドの前髪を撫でる

大切なものを撫でるような口づけが、レオナルドから警戒心を取り去ったのかもしれない

キスは、徐々に深さを増していく

熱い舌が口の中を犯していき、目の前がチカチカと光っているような感覚だった。

苦しい息に酸素を求め、口を広げると声が漏れた。ただ、少しでも隙間を開けるとパンダの熱い舌がその隙間を塞ぐように侵入してくる

パンダの手が頭と腰を抑えてレオナルドを逃さない

首に回されていた手が徐々にパンダの肩からずれ落ち、力が入らないその手で一生懸命パンダの胸を押していた

酸素不足でくらりとした時、ずるりと口からパンダの舌が抜かれた

パンダの胸に倒れる。肩で息をして、酸素を吸えるだけ吸った

なんだ。いまのは。

苦しくて仕方なかったが、それでもなぜかすっきりとした気持ちが芽生えていた

ちゅ、とパンダがレオナルドの額にキスを落とす

はく、はく。と口を動かして、レオナルドはパンダを見上げて尋ねていた。「なんで、?」と

「気持ちよかったじゃろ?キスってな、ストレス軽減になるんじゃよ。幸せな気持ちにもなるしなぁ」

ぽんぽんと、子供をあやすようにレオナルドの背中を撫でるパンダ

その仕草と低い声が、レオナルドに十数年かぶりの安心感を与えた

なんだこれ…。とその心地よさに答えを見つけられないまま、レオナルドはパンダの胸の中でじっとしていた

「…これが、ご褒美?」

「んー。今日持ってきた情報はまだ半分以下やから、これで十分じゃ」

すーっと、レオナルドの頭に顔を沈めてその匂いを嗅ぐパンダ

なんだか、小さな頃に戻ったような気がしてやめろと言う気になれなかった

パンダの膝の上で、強い睡魔が襲いかかってきた

気づけばレオナルドは眠っていた

それをみたパンダは、暫くの間そのままレオナルドの背中を叩き続け

その体を抱き上げて寝室を探した

寝室に横たわらせ、静かに扉を閉める

ふと、隣の部屋が気になりそこを開けた

不気味なその部屋を見て目を見開いたパンダは、少しの間そこに貼り付けられている資料を眺めて、それからレオナルドの家を出た


第九話

有名政治家の息子の事件の担当は別の検事補になるかもしれないという話を耳にした

フォルカという検事補が資料を持ってレオナルドのデスクへ来た

「不起訴か無罪か、かるーい罪にしろだなんてなんのつもりなんだかねえ」

レオナルドのデスクの向かい側の、容疑者が座る椅子に座り、心底めんどくさそうな表情を浮かべて資料を見る

「お前じゃなく俺が担当になるって、なんかきな臭くない?」

「隠したい事があるんだろう。見破られたら困るようなことが」

「例えば?」

「かなり計画的な犯行だった。とか」

自分に割り当てられた別の事件の資料をぺらりと見るレオナルド

フォルカは驚いて詳細を尋ねる

レオナルドはひとつの仮説を語りだす。信じられない事だが、少ない手がかりから全て辻褄が合う話だった

「形ある証拠がなければ、所詮どんな話も推測の域を出ない。たとえ、それが真実だったとしても」

「それは、お前の指針か?まあ、確かにお前は愛とかそういうのを形にしないとわからないような子なのかもね」

「…何の話だ」

「証拠がなくても、浮き出るものはあるものってこと」

ニッと笑うフォルカ。立ち上がる

「やっぱりこの事件、お前に託すわ」


その日の夕方。

今日の仕事も切り上げようとしていたレオナルドの元に、あの有名政治家がやってくる

「うちの息子には未来がある」

息子を案じた父親の姿

「こう言われましてね。この州で最も実力あるツヴァイフェル氏に息子の無罪を証明していただければ、私達の落ちた評判を完全に払拭してもらえると」

フォルカめ。うまくこの男を誘導してくれたものだ

「どうぞうちの息子をよろしくお願いします」

後ろの秘書のような女性に目配せし、秘書が小切手を差し出す

かなりの額がそこには書かれている

金で、嘘をつけというのか。

「…わかりました。必ず真犯人に辿り着いてみせましょう」

「真犯人?」

「息子さんは全くの無罪とは言えませんが、殺人に関しては無罪だと私は考えております」

驚く政治家。

小切手を返すレオナルド

「行政と司法が癒着しては、全てのアメリカ人に対する冒涜です。私は貴方の希望によって刑を言い渡すつもりはありません。お帰りください。また後日、今度はこちらから伺わせていただきます」

冷たい目つきになる政治家。笑顔を浮かべるが、目は笑っていない

「わかりました。こちらはいつでも対応できるようにしておきましょう」

帰る政治家。

レオナルドは再び事務所に残り、情報を集め直す

大陪審を呼び、許可を得た

「貴方を、起訴します」


第十話

被告人の拘留時間は最大48時間

あと数分でその期限が切れるところだったが、なんとか起訴まで踏み切れた

真夜中にぐったりとするレオナルド

疲れた。そんな時に事務所に走り込んでくる男パンダ

「検事。急いでこれ着てや」

女性者の服。何を言っているんだこいつは。と呆れた表情を浮かべる

「あの政治家が雇った奴らが検事のこと待ち伏せしとる」

ぱぱぱと着替えさせる。かぽっとロングヘアーのウィッグをかぶせてにっと笑う

裏口からパンダの車で検察庁を出る

後部座席に身を潜めるレオナルド

「表沙汰にできんようなちょうどいい塩梅の嫌がらせするつもりやったんじゃろう。アホか。そんなんしたらますます自分の評判落ちるじゃろうにのう」

「焦り始めてるんだろう。知られたくない真実に気づかれるかもしれないと」

「知られたくない?」

後ろから知らない車が追ってきてる事に気づく

「気づいてはないと思うんじゃけどなあ…うちに着いてくるのもやめてほしいのう」

パンダの指示通りに彼らを追い払うことに

デトロイトリバーの夜景のきれいな場所に車を止める

二人で車を降り、夜景を眺める

レオナルドに自分の上着を着せ、その腰を抱き寄せる

変装のためメガネを外したレオナルドはなにも見えてない。ぼんやりと、遠くの夜景の光が広がってるのが見えるのみ

ひどい乱視を軽減させるために目を細めるのも控えるように言われているため、周りがどうなっているのかもわからない

パンダの上着からタバコの臭いと、背中に乗った温もりだけがたしかなものだった

後ろにパンダが言う男たちがいるのかもわからない

「レオ」

名前を呼ばれ、パンダの方を見た

そっと顎に指を添わされ、唇を重ねられた

深い口づけに圧倒されながら、逃げるように後ろに下がる

「ダメじゃ。逃げたら」

川を遮るコンクリート製の柵の上に座らされ、ぐっと体を密着させながらまた深い口付けを重ね合う

柵の裏側に落ちないようにパンダの捕まるしかない。レオナルドは知らなかったが、二人のその姿は愛し合う男女にか見えなかった

両足の間に体を押し当てられ、スカートがまくり上がる

露になった太ももをゆっくりと撫で上げられ、びくりと体が跳ねる。

口が離れ、ぎゅっと抱きしめられて耳元で「行ったわ」と伝えられる

どうやら追って来たという者たちは離れて行ってしまったようだ

パンダの胸から離れ、ぐいっと口元を拭う

「かわええよ」

そういってにっこりと笑うパンダ。抱っこしたまま車の中へ

助手席に乗せて、車を走らせる

「多分、検事の家の前にもあいつら張っとるじゃろうな。うち、来るか?」


第十一話

驚くほどのボロアパートにパンダは住んでいた

部屋まで上がっていく階段は軋んでゆっくり歩いても音が立つし、キッチン、シャワールームにトイレは共用。どこかの部屋で喧嘩している声とガラスが割れる音がしている

メガネを返してもらったレオナルドはこの荒れた世界に圧倒されていた。

「部屋の中はそんなに荒れとらんけぇなぁ」

笑いながら一番上の角部屋の鍵を開けた。

古い部屋。奥は三角の変わった間取り。段になってるそこは窓の外の光が入り込んでいる低いベッドが見えた。

「検事の部屋よりは色々あるじゃろ」

「…似たり寄ったりだと思うが」

「ほっか。そしたらわしらお揃いじゃな」

スーツを脱ぎ、ソファーに掛ける

レオナルドも服をパンダから借りて、シャワーを浴びに行く

パンダがシャワーを浴びるのを待ってる間、きょろりと部屋を見渡す

家。というより寝室のようだと感じた

実際、生活感は感じないしそれでいて寝るためには心地よさそうな部屋だ

三角の間取りの部屋の向こうは小さなバルコニーのようだ。外には雨ざらしで古びた木の椅子と、灰皿代わりにしているトマト缶が置いてある

夜も更けているのに、静かな街ではなかった

外では誰かがおおきな声で話しているのが聞こえるし、酔っ払った人間の惨めな声も聞こえてくる

こんなところで寝られるのだろうか?パンダと呼ばれるだけあってあいつはあつも目の下に色濃く隈を残しているが、この騒音による寝不足だとすると納得できた

机代わりにしているのか、木の丸椅子の上でパソコンが通知音を鳴らしている

人のパソコンを見る気にもなれず、窓の外の月をぼんやりと見上げていた

「おまたせじゃ。ホットミルクも入れてきたんじゃが、飲むか?」

頷いてパンダの持っていたマグカップを受け取る

甘い飲み物は苦手だったが、ホットミルクは別だった

幼い時、眠れないときはいつもこれを飲ませてもらっていたからだ

「もう遅いけど、今から寝たら4時間ぐらいは寝れるじゃろ。ベッドは一個しかないから、一緒に寝ような」

時計を見る。すでに午前三時を過ぎていた

ソファーも何も無い部屋で、ベッドに寝ないと言えばどちらかが硬い床の上で毛布一枚で眠らなくてはならないのはすぐに察することができた

ここまでして助けてもらった手前、レオナルドは素直に従うしかなかった

コップを置き、二人で布団の中に入る

狭いマットレスの上で二人、どちらかが布団からはみ出ないようにとパンダはレオナルドをぐっと引き寄せて抱き込んだ

「へへ。昔は兄貴とこうやって寝てたんじゃよ。あったかくて安心できるけーの」

「…兄貴は近くに住んでいるのか?」

「いんや。違う街におるよ」

そう。と返事をする。布団の中、小さな声で囁きあう今の状況が、まるで子供が布団で作った秘密基地の中で夢を語り合うかのように感じた

大の大人がなにをしてるんだと思いながらも、その心地よさに身を委ねる

「検事は?兄弟おるん?」

「…」

レオナルドはゆっくりと目を閉じた

「9歳の頃から孤児院で育った。そこにいた奴らを兄弟と言うなら、たくさん居た」

「そう、なん?」

「…」

くあ、とあくびが出た。うとうとと眠気がやってくる

抱きしめるようにしてパンダはレオナルドの背中を優しく叩く

少しすると、寝息が聞こえてきた

パンダはじっとレオナルドの幼い寝顔を見つめながら、あることを考えていた。


第十二話

裁判。開廷

傍聴席に有明政治家の姿

証言台に息子

罪状は「殺人の証拠隠蔽と共犯の罪」

殺人は別の者が起こしたという主張

それに対して弁護士は脅迫された為、息子の罪はさらに軽いと主張

では誰が真犯人で、誰が脅迫したのかを弁護人に言わせる

検察官はあくまで被告人の罪状を述べるまで。

弁護人は苦し紛れに、色々な人間を挙げるがその全てを論破

被告人も自分がやったと声を上げるが、それはないと論破

閉廷。次の裁判では、おそらく弁護人が被告人の人柄を証明するため証人を差し出してくる

「うまいこといっとるようやな」

エヴァの姿。エヴァから資料を手渡される

事務所で少し話をしていると、パンダがやってくる

「浮気じゃ!」

ひぃ~んと泣く真似をする。そこでエヴァが自己紹介

探偵をやっている。いつもは小さなコーヒーショップを営んでいる幼馴染で“兄弟”。

「あんまうちの弟、いじめんといてやってくれや」

笑うエヴァ

「いじめとらん。なー検事♡」

無視。照れ屋さんじゃのう。と言ってパンダも資料を渡す

息子の関係者の情報。殺された風俗の女性の過去の人間関係

「ほい。ごほーび」

口をすぼめて顔を近づけてくるパンダ。それを見て目を丸くするエヴァ

手で静止し、後で。と拒否するレオナルド

「なんや。お前らどんな関係しとん?」

「ご褒美にチューしてもろうとるんじゃ。昨日は一緒に朝まで寝たよなー。検事」

「それはそれは。仲がよろしいことで」

苦笑するエヴァ。じとりとパンダを睨むレオナルド

「まあ、ほどほどになあ。ほなレオ、また今夜な」

手を振ってエヴァが出ていく後ろで、またパンダが「浮気じゃー!」と騒ぐ

「お義兄さんか…こりゃ最後の厳門になりそうじゃ」

何か言ってるパンダを無視して資料に目を通す

「ど?役立ちそうか?」

「あぁ。使わせてもらう」

口をすぼめてじっとこちらを上目遣いで見つめるパンダに依頼がしたいという

「被告人の家族構成を詳しく調べてきてもらいたい」


第十三話

息子の事件は急展開を見せる


第十四話

閉廷後疲れ切ったレオナルド

最近睡眠時間を全部費やして裁判に力を注いでいた

よろよろと歩きながら自宅へ帰ろうとする

「そんな足取りで帰ってたら危ないわよ」

カルロが後ろから支える。自宅までおくるわ。と車を出してくれる

助手席でうとうと。捜査や調査でいつも食事と睡眠を削る生活をしている為、一息つける時はとにかく睡魔が襲いかかるレオ

「寝ていいわよ」とカルロの言葉に甘えて目を閉じようとしたその時、スマホから着信音。パンダ

「どこじゃー!検事ー!!」

今から自宅に帰る。カルロに送ってもらっている

と言われると、どうしても来てほしいところがあるんじゃ!頼む!!絶対にデトロイトリバーに来て!!と言い放って電話を切られる

面倒臭そうな表情を浮かべる。カルロにパンダに呼び出されてるからデトロイトリバーに送ってくれ。と頼む

カルロは「まったく、あの馬鹿ワガママも良いところだわー」と了承する

カルロの電話にもパンダから着信。大声で「ぜぇーったい検事連れてくるんじゃ!!どっか連れて行ったら承知せんぞ!」とギャーギャー言ってる。眠いけど全く眠れないレオ

デトロイトリバーへ到着。パンダの車がある

車を降りるレオ。カルロが「大変ね」と行って見送る

車の側で立ってタバコを吹かしていたパンダが駆け寄ってきて強く抱きしめる

「検事ぃ〜!よかったぁ〜!!」

今生の別れでもあるまいし。と鬱陶しそうな表情を浮かべるレオ。カルロがクラクションを軽く鳴らし、手をひらりと振って帰っていった

カルロの車が見えなくなってから、パンダがぺたぺたとレオの体を確かめる

「変なことされんかったかのう?」「お前じゃあるまいし…」「そっか。それならええんじゃ」

そう言ってまたぎゅーっと抱きしめられる。パンダの車の側にいると、大量のタバコが地面に落ちてる。

パンダの車の助手席に乗る。「それで?どこへ行くんだ?」

ハンドルに肘をつき、にっこりと笑うパンダ

「明日、検事も俺も休みじゃろ?検事の家でお泊り会しよ」


第十五話

近くのスーパーで買い物する

眠くてたまらないがスーパーで買物するのも久しぶりだな。と思いながらパンダについていく

「明日の朝ご飯と〜。夜の軽食と〜」

歌い出しそうな上機嫌パンダ。ボトルの水も何本か買ってる

「検事、しばらくろくなもん食っとらんじゃろ?今夜はお腹に優しいもん食わせたるからなぁ」

買い物を終えてレオの自宅へ

マイエプロン着けて料理を始めるパンダ

限界なレオは料理が出来るまでソファーで仮眠

料理の音が心地良い

『坊ちゃま。ここは危のうございます』

『構わんよ。坊ちゃま、こちらに座ってご覧になられてはいかがでしょう?』

『うん。オーケストラみたいだ』

懐かしい夢を見ていた。肩を揺らされて、ぱちりと目を覚ます

料理ができた。チキンスープと米の塊。

「おにぎり言うんじゃ。ゆっくりかんで食べ」

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透明な真実 しげまつ @shige_matsun

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