新魔王城
あれから一か月ほどがすぎた。
特訓の成果の甲斐があり、それなりに風魔法は得意になってきた。
ただ、かなりの速度で空を移動できるようになったにも関わらず、いまだに一日で暗黒大陸にたどり着くことができなかった。
大陸中を数日で飛び回れる程度には強化できたはずなのだが、もしかすると上空より侵入できないような結界があるのかもしれない。
こと魔王が住む場所なのだ。
そう簡単に侵入できることの方がおかしいのかもしれない。
「それならば一旦は魔王の侵攻を食い止めることを考えた方がいいかもしれないな」
「……侵攻?」
「あぁ、あと二年のうちに必ず魔王はこの領地を襲ってくる。そこでこの領地は滅びてしまうんだ」
「そ、そんな……」
ルッカは青ざめていた。
彼女ももうここにきて数か月過ぎている。
色々と悪いこともあったけど今が幸せだからこの場所を守りたいと思っていたのだ。
「わ、私になにかできることはある?」
「相手は魔族だぞ? 同族と戦うことになるがいいのか?」
「……うん、大丈夫」
迷う素振りもなくルッカは頷く。
あまり家族といい別れ方をしていないようだったからそこは当然なのかもしれない。
「ただ、さすがに軍を相手にするには俺たちだけじゃ少ないか……」
本来の勇者の行動通りに城へ潜入して各個撃破するほうが楽だったのだが、それは仕方ないか。
「やっぱりまだ長旅は厳しそう?」
「そうだな。母上の許可がなかなかでなくてな」
最近だと特に“アルちゃんが行くなら私も行きます”なんて騒ぎ方をするほどである。
ルッカと常に行動を共にしているところも嫉妬の要因なのだろう。
しかたなく家にいるときは黙って抱きつかれているようにはしてる。
特に末っ子なので可愛いのだろう。
「それで今日はどうしますか? また空を飛びますか?」
「そうだな。もしかしたら地図と微妙に位置が違ったりするのかもしれんしな。無人島からちょっと調べる範囲を広げてみるか」
暗黒大陸を探していた際に見つけた何もない瓦礫の島。
おそらくは魔族によって滅ぼされた島とかなのだろう。
こんな島があるということは近くに暗黒大陸があるのだろうが、周囲を見渡してもそんな場所はない。
ただ、転移の拠点としてはちょうどいいので最近はここに飛んできていた。
いっそ魔族が攻めてくる際の防衛拠点を作ってもいいかもしれない。
「ここ、どこかでみたことあるんだよね」
「暗黒大陸から逃げるときじゃないか?」
「うーん、あの時は密航してたから違うと思うんだよね……」
「まぁ、気にしててもわからないだろうな。いったんは城を作ってみるか」
土魔法を駆使して瞬く間に魔王城っぽい雰囲気の城が出来上がる。
「知ってはいたけど、一瞬なんだ……。でも作ったばかりなのになんだかボロボロだよ?」
「その方が雰囲気が出るだろう? 一応仮にもルッカの城なんだから」
「そっか。私の城なんだ。……えっ? 私の城!?」
ルッカは驚きのあまり目を点にして聞き返してくる。
「ど、どういうことですか!? 私のお城って」
「言ってなかったか? 魔王を倒したらルッカに魔王役をしてもらいたんだ」
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転生勇者は破滅回避のために黒幕として君臨する 空野進 @ikadamo
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