そのころ暗黒大陸では
暗黒大陸では着実に人間世界へ侵攻しようと準備が進められていた。
まずは近くにあるユルグノア領から攻め、そこを拠点にどんどん王国中央へ攻め入り、最終的に人間滅ぼす。
それが魔族の目的であった。
そのために何年も何年も力を蓄え、ようやく念願がかなおうとしていた。
「我が娘ルッカが逃げ出したのは予想外であったが、それも些細なことである。どうせろくな力を持たないあいつは今頃どこかでのたれ死んでいるであろう」
魔王は自分の娘が禄に力を持っていないことを知るとすぐさまその子を処分する準備をしていた。ただ世継ぎをいないことも問題になるので、次の子が生まれるまで養子として四天王の子を一人我が息子としていた。
ルッカとは違い、闇属性に高い素質を持ち、剣の腕も立つ。
まさに上に立つべくして生まれてきた子であった。
「兵の準備はできたか!?」
「もう間もなくでございます魔王様」
「うむ、急いでは事をし損じるとも言う。ここまで待ったのだ。今さら多少伸びたとしても変わらん。しっかり準備するのだ」
「かしこまりました。もうしばらくお待ちください」
ふっふっふっ、ついに念願が叶うのだ。
祖先の魔王が人間に敗れたことによって領地を奪われこの暗黒大陸にまで押し込められてしまった。
ろくに日の光も当たらない。
不毛の大地ゆえ作物も全く育たない。
それが魔族にとって当たり前だと思われていた。
しかし人間と魔族の違いは角のあるなしや適正魔法の違い程度である。
うまいものは食いたいし太陽の光を浴びてのんびり日向ぼっこでもしていたい。
そのためにはやっぱり人間が邪魔である。
今の人間はすっかり堕落してしまい弱り切っている。
その昔人間からは勇者とか言うやつが現れたみたいだが今はその気配もない。
なればこそ好機。
今ならば人間たちの領土を奪い取ることも可能であろう。
魔王は不敵にほくそ笑んでいた。
すると突然海の向こうからとんでもない威力の何かが飛んでくる。
「な、なんだ!?」
それはとんでもなく魔力の込められた風の魔法であった。
おそらく超長距離からによる攻撃だ。
魔法は慌てて防御魔法を張ろうとするが中途半端に魔力の込められた防御壁はあっさり壊されてしまう。
それでも風魔法は城壁に衝突し多少靴ではしたもののなんとか消滅させることに成功する。
「に、人間にもお恐ろしい奴がいるのか……。まさか我らが攻めようとしていることを予測して先手を打ってきたのか?」
とにかく超遠距離からの攻撃では意味がないということには気づいただろう。
そうなると次の攻撃は……。
「すぐに司令官に連絡だ!敵襲があるぞ!」
慌てた魔王だったが間髪入れずに次の攻撃が放たれていた。
上空より降り注ぐ風の刃。
それによって人間領へ進行しようと集めていた魔族の兵たちがあっさり蹂躙させて行った。
「くっ、遅かったか。仕方ない、この攻撃をしてきたやつだけでもこの我が……」
さすがに相手はこれだけのち超高威力の魔法を連発している。
魔力回復薬を飲んだとしても完全に回復しきれてはいないだろう。
その隙をつけばさすがに倒せる見込みはある。
そう思ったのだがさらなる攻撃が魔王城に降り注ぐ。
なんと流星群のように魔物が降り注いでくるのだ。
その魔物の種類も様々で強いものから弱いものまでいる。
ただ今回はそれが全く関係ない。
何せとんでもない速度で魔物が飛んできて、それが城壁にぶつかるたびに爆発していくのだ。
一種の爆弾のようなものである。
それが一発ではなく何度も何度も。
永遠に途切れることがないかと思われたその魔物たちであったが、日が明け朝が近づいてくると急にピタッと止まるのだった。
「な、なんとか持ちこたえたか……」
しかし魔王城はほとんど壊され既に瓦礫状態。
この攻撃はたった1日で終わることはないだろう。
そう考えると明日どう乗り切るか。
それだけを頭に悩ませることとなるのだった。
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