暗黒大陸の向かい方
金属ゼリー討伐の結果、すっかり俺たちのレベルは最上位冒険者すら上回るほどになっていた。
「……ちょっと待て。いくらなんでもお前たち、強くなりすぎてないか?」
さすがにカインに疑われてしまうが、何も証拠がない以上、それ以上踏み込んでくることもできないだろう。
「全部カインさんたちのおかげですよ」
笑顔で答えるとカインは首をかしげる。
「俺、何か変わったことしたか?」
「それならカインの方がもっと強くなってないとおかしいでしょ?」
「それもそうだな。でもそれだとこの状況はどう説明するんだ?」
すでに弱い魔物どころか森の中に生息するどんな魔物も余裕で狩っており、あまりやりすぎると生態系を壊しそうである。
ただ俺の方は元々それなりに力があると思われていたので、そこまで違和感がなかったのかもしれない。
しかし、ルッカの方はさすがに予想外だったようだ。
素早い動きで敵を翻弄して、手に持っている巨大な魔石付き杖で殴り飛ばす。
その際の拍子抜けしそうな声も併せて、とても強そうじゃないのだが杖に触れた瞬間に魔物たちが爆散しているところを見ると何か手品の種があると思っているのだろう。
もちろんそんなものは一切ない。
レベルを上げて物理で殴る。
ボス戦ではすべてを使い切る。
すべての基本行動である。
ただやはり戦いなれていないルッカだとどうしてもぎこちなさが出てしまう。
「ルッカ、叩くときに目を閉じてたら躱されたときに大変だぞ」
「う、うんっ」
俺のアドバイスを素直に聞いてくれる。
「今、目を閉じてたの?」
「俺に聞くな。もう何してるか見えないんだから」
結局俺たちはカインからもう教えることはない、と自由に外を出歩く権利を得たのだった。
ただし、マリーエルが抵抗するので日帰りしか許可されなかったが……。
◇◇◇
日帰りといっても転移を使って飛んでいけばそれなりの距離を移動することができる。
ただし魔王を倒しに行くには大きな問題もあった……。
「暗黒大陸まで渡る手段がない……」
空間の座標と転移先のイメージがあれば飛べるのだが、船で数日かかる暗黒大陸。
下手に飛ぶと海に落ちてしまうので下手に転移魔法を使えなかった。
ただそうなると船での移動になるのだが、それだと数日は最低でもかかる。
下手をするともっとかかるのだろうか?
とにかく日帰りで帰るということはできないので、これ以上先へ進めなくなったのだ。
「どうしようか……」
「空を飛んでいくのはどうですか?」
「つまり風魔法か……」
勢いよくはじき出して、着地地点で減速。勢いを殺して無事に着陸。
飛んでる最中の衝撃とかも常に防がないといけないし、上空だと気温も低い。
寒さの対策も必要だろう。
それでも飛ぶ威力次第では一日でたどり着けるかもしれない。
「よし、特訓するか……」
とにかく俺は風魔法を色んな放ち方で練習していくことになるのだった。
海目掛けてまずは直線状に……。
螺旋を描いて……。
巨大な竜巻を……。
「うーん、なんか違うんだよな」
全部暗黒大陸目掛けてとんではいってるものの俺が求めている時間短縮するような影響はない。
もっとばねのように勢いよく射出されてくれないと……。
「実際に物を飛ばしてないからわからないんじゃないかな?」
ルッカの提案ではっとなる。
確かにただ風を飛ばしているだけだから要領を掴めないのだろう。
実際に物を飛ばしてみたらどんな感じになるかわかるかもしれない。
ただ飛ばすもの……といっても俺たちが持っているものでいらないものは……。
「まぁ、倒した魔物たちを飛ばせばいいよな」
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