狐
鳴川レナ
第1話
家の庭には豊かな自然があった。
犬や猫や鳥などの動物たちが仲良く暮らしていた。池の周りに、荏苒と過ごしていた。
牧歌的という雰囲気がそこにはあった。
ある日、キツネが何匹か庭に来た。キツネたちも同じように動物たちの輪の中に入った。
何も気にしていなかった。
けど。
キツネが来てから、数週間後、犬が噛みつき合って、庭で屍んでいた。共食いするようにお互いの頸に喰いついていた。
次次と、動物たちが、骸になっていった。
なぜ仲良くできないのだろうか。牧歌的な庭の姿は風景だけになった。動物は埋葬してあげた。
キツネたちだけが、庭をかけていた。
キツネだけ。
わたしはその子達を可愛がるだけにした。
ある夜、なぜか目が覚めたあと、庭に不思議な光が見えた。障子を引いた。青白い光だった。
目を凝らす。
キツネ。大きなキツネの背中に竹が何本も生えていた。それは竹林を背負う神々しい動物だった。
「汝、争いの無為を知るか」
キツネの口は動いていないのに、声が聞こえた。
「知っていますよ」
「それは、こうして終わるのだ」
キツネは、庭の草を踏む。
腐りだす。
キツネは、庭の草を喰む。
腐りだす。
キツネが、庭の水を含む。
水が濁る。
わたしは、そうして目が覚めた。
そう夢を見ていた。
そんな現象は、現実ではありえないのだ。
庭を見る。
キツネたちが楽しそうにしている。竹をハヤシタキツネはいない。
じっと、キツネがこちらを見ている。
わたしは、油揚げを準備する。
しばらくすると、キツネの社ができていた。
キツネの石像がある。周りには色々な動物たちがいた。でも、わたしには全部がキツネにも思えた。
狐 鳴川レナ @morimiya_kanade
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