42話
とはいえ桃佳はそこへ向かう道中野宿だったため、それに慣れていなかったのか一睡も出来ていなかった。
桃佳はそのような極限状態で、
この時すでに桃佳は、出発する前の準備で
「ああ……そういうことね。その長い縄がいるって、アンタが言ってたのは……」
「ここで桃佳はようやく気付いてくれたのだ。人間である桃佳がこの崖を登れるわけがないのだ」
空には暗雲が立ち込め、冷たい風が吹きすさんでいるかなか、目の前に立ちはだかる崖の高さは、およそ約60
桃佳の不安が的中し、この崖を登らなければならないとなると、脚がガクガクと震えて座り込んでしまう。
「こんな崖
「わわわ、分かってるわよ!登ればいんでしょ!!その縄で」
桃佳はこの崖を登って玄龍祠へ行き、玄龍を召喚出来るようにならなければ、
そのような使命がのし掛かっている桃佳は、目の前の崖を登ることを断念すれば、この世界を見捨てることになるともいえる。
だがここまで来て引くわけにはいかない桃佳だったが、どうやって登らなければいけないのか、思索するしかなかった。
「う~ん、どうやって登ればいいわけ……?」
「でも高さだと、縄の長さが足りなくて、崖の上まで届かないのだ。」
彼女がそのことを指摘すると、桃佳は今までそれに気づいていなかったのか、パニックを起こしてしまった。
「ええッ!?今何て言った!?縄の長さが足りないっての!?それじゃ私玄龍祠に行けないってこと!?」
「それでも桃佳は玄龍祠に行かなければならないのか?もう無理なのだ」
このように
しかし桃佳は
「何言ってんの!?私は、上に……玄龍祠に行きたいの!玄龍を召喚出来なければ、子瑞くんが……」
「それだからと言って、桃佳には出来ないというのは事実なのだ。縄の長さも足りないのだ」
そう言った
すると、
「それじゃあ、桃佳の身体を縄の端で巻いて、もう一方の縄の端で
桃佳は自分の体型からして体重が重いのではないかと
そのうえ突拍子もないことを思いついた彼女に対して、その通りにすれば自分にどのような危機が起きるか、必死に説明した。
「私はアンタが思うほど重くないから!あとその方法だとアンタが跳んで登ったら、私その反動による揺れで、崖にぶち当たるよね!?何度も」
「桃佳の体重が重いか軽いかなんて関係ないのだ。それに
桃佳の体重はどうであれ、これ以上登る方法を思索しても、それ以外思いつかないうえ、時間の無駄となるだけだった。
「仕方ないのだ。先に崖を登るから、桃佳は
「もう……分かったわよ!やればいいんでしょ!!」
こうして意を決した桃佳と
さっそく
そして彼女と桃佳とを結んだ縄がまっすぐに張った状態となり、桃佳はそれを握った。
一方
しかし桃佳は
「ちょっと!私何度も足が滑って落ちそうになっているんだけど。アンタ、もっとゆっくり登りなさいよ!」
「桃佳が遅いのがいけないのだ。もっと速く登るのだ」
「桃佳まだなのか?登るのが遅いから、
「アンタ、私が重いってから自分が登れないって言うわけ!?」
危機が迫っているにも関わらず、
しかし彼女はそれどころではなく、ここに至るまで一睡もしておらず、体力もほぼ無い状態だった。
そのため桃佳は登っていくうちに、死が隣り合わせとなっているにもかかわらず、何度も白目をむいて眠りそうになっては起きるというのを繰り返していた。
「ンぐ……ギギギ……ぐぐッ、桃佳がまた寝ているのだ。ンぐぐぐぐ……ぐギギギ……早く起きるのだ!」
「う~ん……はッ……!!ぎゃあアアア!!私また寝てたの!?」
このように桃佳が目が覚めた瞬間に宙づりになってしまい、彼女が重しとなる中
その一方宙づりになった桃佳は慌てて縄に捕まって崖に足を付けようとしたが、その反動で何度も足をバタつかせてしまった。
しかし桃佳はこれ以上もがけばもがくほど
それによって彼女が崖から手を放せば、桃佳も一緒に墜落しかねないため、落ち着いて崖に足を付けなければならなかった。
「ハアハア……よっと。
「もう、いい加減にするのだ……。桃佳が動けば動くほど、
それは、
半妖とはいえ、もう腕がちぎれそうになる
桃佳は登れないくせに、
「……っはぁはぁ、やっと着いたのだ……頂上に……!!」
「ほんと!!じゃあ私がそこに着いたら、手を差し伸べてくれる?」
背中に荷物を背負ったその重さに引っ張られながら、桃佳は縄を震える腕でしっかりと握り、ふら付いて棒になった足を崖に掛けていく。
ひと足先に登りきった
やがて、これまで登り続けた桃佳はその頂上に右手が掛かり、それを見た
そして、
もうこの時点で、日が西へと大きく傾いていた。
「あぁ……着いたよ……玄龍祠に……!!」
「もう……
頂上にたどり着いた途端、二人ともしばらくうつぶせに突っ伏して、顔も上げることも出来なかった。
そんな彼女らの前には高さ約3丈(6.9m)、約幅1丈(2.3m)もある黒曜石でできた、重厚な造りの門扉が聳えていた。
美少女龍召変身記~龍を召喚するために変身ヒロインになります!! ナカミツ @nky_kny
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