第5話 バラーダ村到着


「小僧?名は何と申す?」

「初めまして。メルスです」



男性が何とも言えない渋い顔をしたのを見て、ゴブリンが間に入ってきた。

「あにま!なんなん、なむな!うにまー」


手と腕を使いながら男性に一生懸命話しかけている。

何を伝えているのかさっぱり分からないが、きっと変なこと


「うむ、そうか‥」

男性は右膝を地面に付き、俺と目線を合わせた。

「ボブから話は聞いた。まだ幼いのに、大変じゃったのう。わしの名はガードじゃ。メルスと言ったな。良い名前をもらったのう」

ガードは目尻の皺を深めて俺の頭を撫でた。

ぎゅうっと胸が締め付けられるような感じがする。


「このオーガス森の中にバラーダという村がある。半時も歩けば着くだろう。わしはバラーダ村の村長でな。今宵はもう遅い。泊めてやるから、わしの家に来なさい」

出逢ったばかりのこの初老の男性は、悪い人だと思えなかった。

ゴブリンがこんなに慕っているのに、悪い人である訳がないと思った。もし仮に悪い人だったとしても、こんな得体の知れない森で魔物に喰われるのと大差ないと思う。

「良い返事だ!礼儀正しくて宜しい!それでは、村へ帰ろう」

「うにまー!」

ゴブリンは満面の笑みで俺の腕を引く。

なんでこいつがこんなに嬉しそうなんだ。小躍りしながら歩いてやがる。まったく‥。

呆れつつも、ゴブリンに親しみを覚え始めている自分を自覚しながら、村までの道を歩き始めた。



バラーダ村到着




「ほれ、向こうに灯りが見えるじゃろう。あそこが、我がバラーダ村じゃ」

ガードの声は力強く、ゴブリンは誇らしげな表情で村を見つめている。

満ちた月が雲の影に身を隠したせいで、灯りがより一層輝いて見える。


村は思っていたよりも規模が狭くて小さな集落のようだったが、密接して揺らめく赤橙の灯りはとても幻想的で、厳かな雰囲気さえ感じられた。


「戻ったぞ!」

村の敷地へ入り、ガードが帰還を宣言すると、次々に民家の扉が開いた。

「とーう!バラーダレンジャー参上!!」

今の俺と同じくらいの歳の子供たちが、俺たちに向かって走ってくる。


「俺は正義の赤!バラーダレッド!」


「俺は海のようにバラーダブルー!」


「私は愛を司る!バラーダピンク!」


「自然の緑!バラーダグリーン」


「閃光の光!バラーダイエロー!」


「5人合わせて!この村の平和を守る、バラーダレンジャー!」

俺は呆気にとられて、決めポーズをとる5人を見守るのが精一杯だった。


俺の反応が気に入らなかったのか、レッドと言った奴が一歩前に出てきた。

「お前は何者だ。このバラーダ村は、俺たちバラーダレンジャーが守る!覚悟しろ!」

「はあ‥」

なんだこいつら。

ガードが俺を振り返る。

「どうじゃ、元気でいい子達だろう!お主と同じくらいの歳じゃないか?」


「あっ、はい。そうですね、多分‥」

「おいー!無視をするな!お前だ、そこの銀髪!話し聞いてんのか!?」

あぁやかましい。仕方ないなぁ‥。

「俺は漆黒の闇を司る、バラーダブラック!」

シャッキーン!

ポーズまでバッチリ決まったぜ!ちょっと厨二病臭かったか??



「はーっはっはっ!」

ガードが天を仰いで大笑いしている。

「これから皆の仲間になる、バラーダブラックのメルスじゃ。わしがスカウトしてきた。皆よろしく頼むぞ」

「そうか、新しい仲間か!俺、レッドのノアだ。よろしくな!」

村長の威厳か、バラーダブラックの効果か。

ついさっきまで三角だったノアの目は、今にも星屑が溢れそうにキラキラしている。


「俺ブルーのネオ!よろしく!」


「私はピンクのローゼよ。よろしくね」


「私はイエローのフランよ!」


「僕は、グリーンのアリ。よろしくね」

次々と子供たちが自己紹介をしてくれる。

アリは俺の隣に来ると、ニコッと笑ってどっから出したのかわからないが、花を渡してくれた。


「ありがとう!俺はブラックのメルス。よろしく!」


その後、ガードが村人全員に俺を紹介してくれた。

村人たちは全員、俺のことを暖かく歓迎してくれた。

バラーダ村は子供6人、大人13人の小規模な村で、村全体が一つの家族みたいな感じらしい。

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興味本位で死んだら異世界 田中鈴 @yamaokasann

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