第4話師匠(親父)との出会い
「なむなー」
はっと我に返ると、ゴブリンが俺の服の裾を引っ張りながら、太陽と反対の方角を指差している。
「一緒に来いってことか‥?どこへ行くつもりなんだ?」
「うにま、なんなん」
ゴブリンは俺の質問などお構い無しに、俺を引っ張って歩き始めた。
どれくらい歩いただろう。
ゴブリンの目的も分からないまま、一度も足を止めることなく歩き続けている。
日は完全に落ちてしまって、満月の月明かりが木々の間から溢れている。
地平線に溶け込もうとする太陽に背を向けて、ひたすら真っ直ぐ歩いてきたはずなのに、森から抜けられる気配はなかった。森の全貌が知れず、この森は永遠と続くのではないかと微かな絶望を覚えた時、遠くで何か動いた気がした。
「おい、待て!今なんか動いて‥!」
先を歩くゴブリンの腕を鷲掴み、自分の方へ引き寄せようと‥
「おーい!ニマかー?戻ったのかー?」
「なむな~!!」
突然男性の声が響き、ゴブリンは男性の声がした方へ嬉しそうに駆け出す。
薄暗い中で目を凝らすと、遠くで男性がマントの中からランタンを取り出していた。ゴブリンは真っ直ぐ男性へ駆け寄り、抱擁を交わしている。
「ボブ‥?どういうことだ?」
俺は混乱しながらも、ゴブリンと男性の元へ駆け寄った。
「ボブ、おかえり。遅かったから心配したぞ?そうじゃ、グリフォンがお前を助けたのに怒られたって拗ねておったぞ」
「なむな、あにま!うにまー」
「そうか、そんなことがあったのか。でもな、ボブ。自分の命はもっと大切にしないとダメだぞ?」
男性はゴブリンと視線を合わせ、諭すように優しい口調で語りかけた。
「なむな‥」
ゴブリンは叱られた幼い子供のように俯いている。
男性とゴブリンは意思の疎通ができている‥?
確かに、ゴブリンは俺の言葉を理解しているような素振りは見せていたけど、俺はゴブリンの言葉も考えていることも理解できない。
この人はゴブリンの言葉を理解できるのか?一体、どうやって‥?
まってくれ何故この人の言葉は俺に分かるんだ?そして何故この人と同じ言語をいつのまにかゴブリンに話しかけていたんだ?
ランタンの灯りで照らされた男性は初老くらいだろうか。
顔は傷だらけで、左脚は義足だ。
良く見ると右腕も肘から下が無いようで、そのためのマントかもしれないと思った。
きっと、生と死の瀬戸際を幾つも潜り抜けてきたのだろう。
次の瞬間、鋭い視線を感じ、俺は男性と目が合った。
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