他人の死
白川津 中々
◾️
酒を飲みながらニュースを見ていたら見知った名前の女の名が出てきた。
三城亜紀
名前も顔も、彼女と同じだった。
「山中で発見された遺体は半分腐敗しており……」
淡々と読まれる報道内容。おきまりの「事件事故の両面での捜査」。彼女が死んだという事実よりも何故死んだかが重視され、死が、エンタメのように処理されていく。人の死が、命が軽く、簡単に扱われている。
しかし俺もそう。俺もそうなのだ。死んだのが彼女じゃなかったら、俺が知らない人間だったらきっと、その死を娯楽として消費していただろう。
知っているから、彼女だったから、俺は動揺している。それだけ。それだけに過ぎない。
俺の知らない誰かであれば、この一日は変わらなかっただろう。
死んだのが彼女じゃなかったら、他の、誰かであったならば、俺はもっとずっと、楽でいられたのに。
「三城亜紀、三城亜紀、三城亜紀……」
彼女の名前を、繰り返す。
死んだ彼女の名前をただ、繰り返す。
他人の死 白川津 中々 @taka1212384
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