第6話悪役令嬢、お姉ちゃんになる

「ぅ、うぎゃぁぁぁぁああああ!!」


「あぅぃ、うぇぇえああぁぁぁ!!」


 2赤ん坊の声が室内に響く


「マリー、よく頑張ってくれた。こんな元気な赤子が2人も…」


「サイリス。とりあえず、セシリアを呼びませんか?」


「あ、あぁ。ロッド、セシリアを呼んで来てくれ。」


 ロッドと呼ばれた老人はかしこまりましたと一言、その後お辞儀をしてから部屋を出て素早く、セシリアの部屋とは逆方向のある部屋へと向かった




















『ルナ、おはよう。』


 怒りの籠った声色で、いつもの挨拶をする


『お、おはようセシリアちゃん。あ、あのn』


『言い訳は聞きたくないわ!』


『うっ⋯わ、私は絶対起きとくなんて言ってないもん!』


『言い訳は聞きたくないって言ったでしょう!あと、もん!なんて可愛い事言わないで、怒る気失せるでしょう!』


『か、可愛い⋯?』


『えぇ。なんで私と違うのか分からないけど、その低めだけどふわふわとした可愛い声から、もん!とか可愛いわよ。』


『いやいやいや。セシリアちゃんのが声も顔も可愛いから!』


『声はまだ幼いから高いだけよ。つり目に男っぽい顔つき、どこが可愛いのよ。男装するのにピッタリの顔じゃない。』


『何言ってんの!声はまだどうなるか分かんないだろうからいいけど、顔はダメ!つり目だからこその笑った時のギャップだって可愛いし、そのムスッとした顔も可愛いんだよ!』


『なっ!?ル、ルナの顔を私は褒められないから⋯顔褒めるの、ずるい。』


『かわ⋯じゃなくて。⋯私の顔、見たいの?』


『⋯⋯⋯うん。』


『ちょっと試したいことがあるから、やってくれる?成功出来たら私の顔、見れるよ。』


『⋯どんなの?』


『まず、目を閉じて。』


『閉じたわ。』


『なら、私の声だけに集中して。他に何も考えないで、私の声だけ。』


『⋯⋯⋯⋯⋯』


『実際に目を開けずに、心の目を開けるようなイメージで、見たい景色を想像して。その中に私の声があるように、想像して。』


『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』


『⋯難しいかな?無理そうだと思ったら言っ⋯て⋯⋯』


『……貴方が、ルナ?』


『⋯すごい!本当にできたんだ!!』


『ルナ、無表情でそのテンション怖い⋯』


『あぁ、これは親の遺伝でね。表情筋が全然動かないんだ。』


『予想より可愛い顔してる。けど、本当に黒髪なんだね。』


『別に可愛くないよ…黒髪は、ヤダ?』


『…ルナが違う世界って知ってるから、魔王にならないって信じてるから、大丈夫だよ。』


『…信じてくれて、ありがと。』


『ルナって何歳なの?』


『17歳で死んじゃったから、見た目は17歳だね。精神的には17歳+セシリアちゃん、かな?』


『17歳!?年齢にしては少し小さすぎない?』


『155は別に小さくない!この世界がみんなでっかいの!』


『いいじゃない。可愛い。』


『セ、セシリアちゃんのが可愛いよ。改めて見ると、金髪碧眼の大人びたロリ良すぎる!』


『ルナ?落ち着いてくれない?無表情で勢いよく言われると、すごく圧が感じて正直怖い。』


『けど、これからイケメンに育つと思ったら抑えきれなくて。』


『ルナにとっての王子様になれるよう、頑張るね?』


『無自覚女タラシになりそう。天然タラシ予備軍め!』


『ムッとした表情は出来るんだね。可愛い。』


『やめて、そろそろ無理かも。』


『…なにが「お嬢様!お嬢様!!」』


 声が聞こえ、セシリアは意識を通常に戻した


「ロッド?どうしたのそんなに焦って。」


「お嬢様が眠っている様子でもないのにどれだけ話しかけても返事がなく、脈もあり呼吸も安定しているので、まさかどこかを打ってしまい植物状態になったのではと思い焦ってしまいました。」


「心配をかけてしまったわね。ごめんなさい。」


「いえ、よくよく思い出して見ると考え事をしていただけのようですね。旦那様もよくやられますが、お嬢様は初めて見ましたのでつい思考の邪魔をしてしまいました。申し訳ございません。」


「大丈夫よ。それより、私の部屋では無いここまでわざわざ探しに来たってことは。⋯何かあるの?」


「はい。朗報でございます。」


「エルって人から男装許可証でも届いた?」


「届いているという報告はございません。朗報というのは⋯お嬢様、姉上にになられましたよ。」


「え、それって!!?」


「ええ。無事、産まれました。双子で一気に弟と妹ができますね。」


「案内して!見たい!私の妹と弟!!」


「かしこまりました。」


『あー。そういやいたなぁ。』


『ルナ知ってるの!?』


『今思い出したー。』


『どんな子?』


『会ってからのお楽しみのがいいんじゃない?まあ、名前は教えてあげる。』


『ほんと!?やったぁ!』


『こーゆーとこは子供っぽくて可愛いな。弟くんはリーベルクで愛称はリック。妹ちゃんはスイローネ愛称はスイだよ。』


『えへへ。リックにスイかぁ。私の可愛い弟と妹…』


「お嬢様。この部屋です。」


「ありがとうロッド。」


 セシリアは扉を叩いた


「お母様、セシリアです。入っていいですか?」


 勢い余って大きな声を出さないように気をつけながら質問する


「あぁ。もちろんだとも。」


 予想外にもサイリスの声が聞こえてきて、驚きのあまりロッドの方を見た


「すみません。伝えておりませんでしたね。家族全員がお待ちです。どうぞお入りください。」


「し、失礼…します。」


 まだ赤ちゃんである弟たちを驚かせてはいけないと、ゆっくり扉を開ける



「お、お母様。私の弟と妹は…」


「ここにいますよ。こっちが弟のリーベルクで…」


「こっちが妹のスイローネだ。」


「じゃあ愛称はリックにスイね。私はセシリア。貴方たちのお姉ちゃんよ。これからお兄ちゃんになるかもしれないけど、どっちにしても貴方たちを大切にするわ。約束。」


 セシリアはリーベルクに左手、スイローネに右手の小指を差し出した


「お母様!握りました!たったも柔らかくて、可愛いです!」


「ふふ。セシリア、私も約束するわ。」


「…?何をですか?」


「貴方が男装するようになっても、貴方は私たちの子よ。私は貴方を愛すわ。この身が朽ちるまで…ね。」


「俺もだ。マリー、リック、スイ、そしてセシリア。みんな俺が守りみんな俺が愛す。これだけはどんなことがあろうとも破らない約束として心に刻む。」


『ルナ…』


『んー?』


『私、両親に愛されているみたい。』


『うん。そうだね。』


『男装のことだって嫌がられると思ってた。』


『…うん。』


『けど、大切に思ってくれてる。…私、この人たちを守りたい。絶対に強くなって幸せにしてあげたい。』


『その為には生きないとな。』


『うん!絶対頑張るよ!!』


 その決意を知らない両親と双子に、セシリアは決意表明と言わんばかりの最高の笑顔を見せた

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転生男装悪役令嬢!のお助け役 黒丸 @kuromaru0522

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