でかき氷を食べる2
見覚えのあるようで、どこにでもある田園風景がまず目に入る。
「は?」
俺は気付けば道の真ん中に棒立ちしていて、これもまた見覚えのある道である。
「ここは、異世界じゃないな」
どう見ても道はアスファルトだし、田んぼの他に家がまばらに立っている。
色褪せた外壁、錆びた看板、電柱には近所の歯医者の広告が張り付けてある。
懐かしい、地元の風景だ。
「という事は……」
俺は記憶を頼りに道を歩いて辿って行くと――1件のボロ屋のような店に辿り着く。
それは子供の頃、よく通っていた駄菓子屋だ。
小学校の近くにあるので、友達とよく帰りに寄っていた。
「夏は、かき氷があったっけな」
かき氷と言っても、そこまで本格的なものじゃない。
近所の氷屋から買った氷を、よくある家庭用の電動かき氷で削って、それにカラフルなシロップを掛けただけのものだ。
どうやら
「もう何十年ぶりだ……さすがに店主の爺さんは亡くなってるか」
そう思い、戸を横へ引くと――そこには店主の爺さんと、店番をしている婆さんの姿があった。
「おんや、ユーちゃんじゃねーの。暑いのに大変やったど」
「氷くれ! 美味しいの!」
俺は自然とその言葉が出ていた。
しかし、その声は妙に若い気がする。
「よっしゃっ。爺さんが凄いのこさえてくれっから、ちょっと待っとけ」
「うん!」
俺は言われるがまま、店内で待つ事にした。
プラスチックの容器に入った色んなスナック菓子、飴、ガム、おもちゃ付きのラムネ――どれも懐かしいものばかりだ。
当時、放送していた特撮ヒーローの変身ベルトも置いてある。誰か買う人は居たのだろうか。
「ユーちゃん。出来上がったけ」
「はい! 100円!」
今にして思えば、時代を考えても安すぎである。
この店そのものが、この老夫婦の娯楽だったのだろう――。
丸いガラスの器には、粒の荒いかき氷が茶碗2杯分ほど盛られていた。
その上からいつものようにカラフルなシロップを掛けるのだと思っていたのだが――。
「今日は特別だからね。ほら、ドライアドの果実をジャムにしたものさ」
「へぇー。ドライアドってなんなの?」
「不思議な植物さね。とても美味しいけ、食べてみんさい」
若干黄色い、透明のシロップのようなものを上から掛けていく。
少し潰れた果実もかき氷に添えていく。
「ほら、完成け」
「いただきます!」
見た事も無いかき氷に、俺は心が躍った。
スプーンでかき氷と一緒に、果実をすくい、これを一緒に口へと運ぶ。
「ん~~ッ!」
とても花に近い風味が通り抜けていくようだ。
甘い煮ているのもあり、それがかき氷と合わさって丁度良い感じになっている。
「これ美味しいね――」
「そんれは良かった。まだまだあるから」
パクパクと調子に乗って食べていると――ふいに、頭を締め付けるような痛みが襲う。
「いたたたたっ」
冷たいモノを食べ過ぎると来る、例のやつだ。
「どうしたんね?」
「いや、かき氷食べ過ぎて頭が――」
「どうしたんだ? 頭打ったのかい?」
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