第6話

   でかき氷を食べる1

『打ちました、打ちました! 4番キャプテンの浅田君、逆転のヒットを打ちました――』


 テレビから甲子園の様子が放送されているのを横目に見ながら、俺は部屋で業者を背中を見守っていた。

 

 ミーンミンミンミミミミ――。


 この盆を開けて最初の日曜日。

 当然まだまだ夏本番といった気温なのだが、窓は全開である。

 セミの鳴き声が暑すぎて年々減っているとは聞いていたが、近所のセミは容赦なく鳴き続けている。

 

「暑いですねー」

「そうですね」


 気のない返事をしながら、俺は冷たい水を飲む。


『さぁ逆転のランナーが出ました。角労高校、次に繋げれるか!』


 ちなみに扇風機は業者の男性の方へ向けている。

 彼もまた、この暑い日曜に仕事で来ているのだ。

 同情はするし、気も使うが――それでも、早めにエアコンを直して欲しい。


「あー。この部品ちょっと摩耗まもうしてますねぇ。もう古い型なんで、明日業者に連絡してパーツすぐ取り寄せて貰いますんで……」

「はい、分かりました」


 ゴネた所で、どうにもならない。

 新しく買うにしても大家に相談しなければならないし、設置は多分来月以降になるだろう。この時期に修理に来てくれただけでも御の字だ。

 

「じゃあ、また明日にいつ入るか連絡しますのでぇー」

「お疲れ様でした」


 今日中に直らない事が確定し、我ながら生気の無い返事をしていると思う。

 ステンレスのグラスに注いだ水を一気に飲み干し、部屋中の窓を閉める。

 高校球児がこの暑い中、頑張っているが――俺は容赦なくテレビを消す。

 服も迷ったが、一応いつものスーツ姿に着替えようと、吊るしてあったズボンを履こうと――して、足を滑らす。


 ガンッ。


「痛っ……やらかした」

 

 そう愚痴りながらも、立ち上がりズボンを履き替える。

 上着も羽織り、いつものように白い鍵を取り出す。


「何か、冷たいモノが食べたい。涼みたい……」


 そう念じるように白い鍵を玄関に差し、回す。


 開かれた先には――。


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