でかき氷を食べる3


「はっ」


 ミーンミンミンミミミミ――。


 相変わらずうるさいセミの鳴き声に、目を覚ます。


「おや。目を覚ましたかい。でもしばらく動かさない方がいいんじゃないかなぁ」


 俺は、気付けば誰かの膝枕の上で寝ていたようだ。

 天井が全く見えない。


「大家さん、ですか。確か、鍵を使って外に出ようとして……」

「白昼夢って知ってるかい」

「え?」

に触れたせいなんだろうけど……いやぁ白い鍵でまさか“あそこ”と繋がっちゃうとは」

「なんの、話です?」

「ん? まぁこっちの話さ。とりあえずこの部屋は暑いねぇ。家賃は相殺してあげるから、しばらくは近くのビジネスホテルで泊まるといいさ」

「え、えぇ。そうします」


 大家の柔らかく、しかし少し酒臭い膝から起き上がる。

 

「夢、か」


 口の中にまだあの味が残っている気がする。


 しかし次第にその味も、夢の記憶も、かき氷のように溶けていく――。


「で、なんで勝手に冷蔵庫開けているんですか」

「こう暑いとスーパー行くのも億劫でねぇ……ホテルに缶ビール持って行かないだろ? 少し分けてくれよー」

「はいはい……」



 夏の、少し不思議な体験だった。


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