王国で一番のパン職人冤罪追放!伝説のパンの戦士に選ばれたから魔王倒します。

@pepetarou39

第1話:王国を追われる日


「アジャム、何で王様に腐ったパンを献上したんだ! この城から出ていけ!」


俺は突然そんな事を言われ呆然となった。

料理長の声が頭の中で何度も響いてくる。俺は心底信じられない思いだった。昨日の朝、王様に献上したパンがなぜか腐っていたんだ。俺のパンはいつも町市場で新鮮な物を購入して作っている!ありえない。 間違いなく冤罪!

それが原因で追放されるなんて。


「ちょっと待ってくれよ、料理長!俺が作ったパンが腐るわけないだろ!何かの間違いだ!」


「黙れ!証拠は揃ってるんだ。本来なら打ち首だが、お前の今までの功績を加味して追放で許してやるんだ!分かったらお前は今日で王国を出て行け!」


そう言われた瞬間、目の前が真っ暗になった。俺は王国一のパン職人として名を馳せていたのに、今まで築いたものが一瞬で崩れさり、地獄に突き落とされた気分だ。

俺はその後どうやって帰ったのか覚えていない。

気がついたら、朝が来た。

重い足取りで部屋を出て、愛用のパン捏ね台に別れを告げる。涙が自然とこぼれた。


「お前で作るパン、最高だったぜ…」


相棒との別れを告げ、

外に出ると、既に朝日が高く昇っていた。

門までの道のりを歩いていると嫌な視線が俺に集まっているのを感じる。王に腐ったパンを出した罪人と噂でも回っているんだろう。

門の前まで歩くと門の前には、俺を見送るために幼馴染のバタスがいた。


「アジャム、本当に行っちゃうの?」


バタスの目には涙が浮かんでいる。彼女は俺にとって唯一心を許せる存在だった。

俺の作るパンをいつも笑顔で食べてくれて、

俺がパン職人を目指したのも彼女の笑顔をもっとみたいからだった。



「バタス、俺にはもうここに居場所がないんだ。でも、俺は諦めない。必ず戻ってくる」


「アジャム、本当に大丈夫?なんか、泣いちゃいそうだけど…」


バタスは涙を拭い、無言で俺の手を握り締めた。


「アジャム、これを持って行って」


バタスは小さな包みを手渡した。包みの中には、彼女が作ったパンが入っていた。

彼女の気持ちが詰まったそのパンを見て、俺は胸が熱くなった。


「ありがとう、バタス。でも、もう少し焼いた方が美味しく仕上がる…」


「バカ!ちゃんと焼いたパンだから心配しないで!」

 

「冗談だよ、ありがとう大切に食べるから」


「ありがとう。私待ってるから必ず帰ってきてね!」


「ああまた会おう!元気で」


俺はそれだけ言うと、包みを大切にバッグにしまい、再び歩き出した。王国の門をくぐり抜けると、広がる大地が俺を迎えた。ここから先は、自分の足で道を切り開くしかない。

俺はもうパン職人ではないのだから。


その日の夕方、俺はとある森の中にいた。木々の間を歩きながら、これからのことを考えていた。どうやって生き延びるか、どこへ向かうべきか。考えは尽きなかったが、答えは見つからなかった。


「腹減ったな…バタスのパンでも食べるか」


その時、ふと目に留まったのは、パンの絵柄が描かれた古い祠だった。森の中にひっそりと佇むその祠は、不思議な雰囲気を醸し出していた。俺は興味を引かれ、その祠に近づく。


「何だこれ…」


祠の中には、古代の魔法書が置かれていて、俺はその魔法書を手に取ってみた。

その瞬間、眩しい光が放たれ、目の前に美しい女性が現れた。


「あなたがこの魔導書に選ばれたものね。私はパンの女神よ。」


「え、女神様!?こんなところで何を…?」


「実は、この世界に魔王が復活してしまったの。彼を倒すためには、

伝説のパンの戦士の力が必要なの。」


「伝説のパンの戦士…?それはいったい…」


「この魔導書には、その戦士になるための呪文と魔導書から魔法のパンが出てくるの。あなたがその力を使えば、魔王を倒すことができるわ。」


「いや、ちょっと待ってくれ!何で俺が魔王なんか倒さなきゃいけないんだよ?!」


パンの女神は微笑みこう言った


「見事魔王を討伐したあかつきには、神のパンの作り方を教えてさしあげましょう!」


「なんだって!?神のパンだと!?それなら話は別だ!」


神のパン!なんて甘美な響きなんだ!どんな味で、どんな形をしていて、

ああ考えただけで興奮が止まらない!

女神は魔導書を俺に手渡した。


「ありがとうございます女神様。この魔法のパンで、必ずや魔王を倒してみせます!」


「その意気よ。呪文を詠唱してパンを口にすれば、あなたは伝説の戦士に変身できるわ。頑張って、アジャム。」


そう言って、女神は消えた。俺は魔導書を開き、パンを食べながら呪文を読んだ。



「古の秘術より、パンの魔法を呼び覚ませ。

小麦の粉よ、生命の息吹を宿せ。

水の清らかな流れよ、潤いと力を与えよ。


焼きたての香り、風に乗せて広がれ。

パン焼き石の熱、炎の中に踏み入れよ。

窯の奥深く、魔法の変容を許せ。


大地の神秘、生命の源よ、我が身に宿れ。

硬さよりも柔軟さ、

愛と勇気よ、新たな姿へと変われ!


パンの魔法、今ここに完成せよ!」


瞬間、体中に力が漲るのを感じた。視界がクリアになり、筋肉が強化されていくのが分かった。しかも、俺の姿は完全に変わり、伝説のパン戦士の姿になっていた。


「これなら、やれる!」


俺は確信した。この魔法のパンを使えば、どんな困難も乗り越えられる。俺の目的は、パン職人としての名誉回復と、魔王討伐となった。俺は再び歩き出し、新たな冒険の旅へと踏み出した。


その夜、俺は星空の下で寝袋に包まりながら、未来への希望を胸に抱いて眠りについた。明日から始まる新たな冒険に、俺は胸を躍らせていた。


「明日からはもっと面白いことが待ってるはずだ。頑張るぞ!」


次の日の朝、俺は目覚めと共に再び歩き始めた。俺の前には広大な大地が広がっていたが、心には恐れはなかった。俺には魔法のパンがあり、それを支える強い意志があった。


「絶対に戻ってやる。俺は絶対に諦めない!」


俺は誓った。必ず王国に戻り、自分の名誉を取り戻すと。俺の冒険は始まったばかりだが、その一歩一歩が俺を強くし、新たな力を与えていくのだった。


こうして、パン職人アジャムの壮大な冒険が幕を開けたのだった。

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