第14話 あるAクラス生徒の話題の迷宮探索実習 第一迷宮

 秋島先生が渋い顔で


「特別講師による臨時講習を行う」


 と言った。明らかに不本意だとわかるその渋い顔は上、たぶん校長先生当たりの指示何だろうと思わせるのに十分なものだった。



 最近発見された、しかもすでに踏破されたという隠しエリア。なのに後に続いてみれば死傷者続出で難易度実は高いんじゃないか? と噂されている初心者迷宮と呼ばれていた現在は三面鏡の迷宮と呼ばれているダンジョン。


 実は私たちが潜っていたのは3つつながったダンジョンのうちの最初の一つにすぎなかったようで最深部で鏡を壁に設置するという条件を満たせば次の迷宮に入れるという隠された仕様があったらしい。入学して7年目だけど全然気づかなかった。というより鏡をわざわざ持ち込む面倒なことするやつがいなかった。というより神様側が名付けたという三面鏡の迷宮という名前に気づかない限り隠しエリアの存在には正直思い至らないだろう。


 そんな隠し迷宮を見つけた人は頭がおかしいか何かの知識か知恵関係の能力が発現していたんだろう。ついでに踏破までしたんだからとんでもなく強いに違いない。情報が不自然なほどに降りてこないのでよく分からないけどとにかくうちのクラスはその新しく見つかった隠しエリアの話題で夢中だった。


 例えそれで7年Aクラスの上位成績のパーティが失踪していても。明らかに危険な匂いをさせていたとしても、だからこそ好奇心がうずいて仕方がなかった。


 そんな時に臨時講習。関係があるに違いない。そう思わせるには十分だった。


「初めまして。校長からの要請により臨時講師をさせていただくことになった匿名希望といいます。本当に短い間ですがよろしくお願いします」


 名前言わないのかよ、とたぶん大半の子が思ったと思う。



「指導能力はともかく短い間でも共に活動することで何らかの学びがあるのではないか、という校長は考えているようですが自分としては保証はできません。文句は校長に行ってください。では、長々とした説明は抜きにして行きましょう」


「おそらく校長が望んでいるだろう、三面鏡の迷宮実習へ」

「やっぱり貴方が隠しエリアを攻略したんですか!?」


「質問の類はうまく答えられないのであまりしないように。ただその答えならイエスと答えます。自分が見つけて最後まで見物に行きました。最後の迷宮まで見物に行きますが不通に行くならかなり危ないところなのでくれぐれも自分達なら簡単に攻略できるとは思わないように」


「おい、それは良いのか? そんな予定聞いていないぞ?」

「予定はそもそも言っていないではないですか? 適当にやるとだけしか言っていないはずです。それにどうせ自分に頼み込んだということは目的はこれでしょう。今回は軽々しく行動したこちらのミスもあるので受けましたが受けるのは今回だけです。もう同じことを頼まれて設けませんがね。強制しようとしたら相応の対応をしますとだけ。別の講習でもしますか? 考えてきてはいませんが」


「いや、いい。ただし私もついていく。あと生徒の安全にはくれぐれも気を付けるように。安全が確認できなければすぐに中止する」

「大丈夫。観光程度で終わりますよ。ほぼ間違いないと言っていい。文句なら校長に行ってください」


 ダンジョン探索って観光で済むようなことはないはずなんだけど? 普通に危険はつきものなのでは? 安全って確実なものなの?



 隠しエリアの話題がなければもう何年も入っていなかった初心者迷宮改め三面鏡の迷宮。隠しエリアを見に行こうとうちのクラスの何人かが入ったらしいけど立ち入り禁止だと警備員が常時見張っているらしい。そこをわざわざ突破して退学にされたらこまるので仕方なく帰ってきたらしいけど。それからは上に潜る許可をお願いしているらしい。


 それがこんな唐突に、しかも踏破者の人同伴で中を見れるなんて思わなかった。しかも言っていたことが確かなら実習をしてもらえるのは今回だけ。私たちだけが受けられるのだ。本当に運がいい!


 準備は万端に整えてきた。高難易度迷宮に潜るのと同等かそれ以上の準備をクラスのみんなが整えているのが見える。それだけ隠しエリアに期待しているのだ。



「あ、7年Aクラスの臨時実習できました。校長から全ての行動に許可を出すと言われているので通行許可お願いします」

「は、はい。お気をつけて

「欠けずに帰ってきますよ。迷宮見物くらいのものです」




 第一エリア。初心者エリアと呼ばれていた場所は特に苦労はなかった。当たり前だ。もう1年のころに皆深部まで踏破している。ドロップもうまみのない試験の成績のためだけの迷宮だった。


 なのに


「そういえば、皆さん。このエリアの敵はまず鏡が出てそこから敵が飛び出してくるわけですが、中にはこの鏡の中に入れないかと試してみた方もいたでしょう。で、できなかったと思います。実際ここではそれは出来ません。ですが一つたぶん役に立つものがあるんですよね」


 ? 何言ってるの?


。その間鏡は壊さないために敵は倒さずに。十分くらいでいいと思います。その後覗き込んだ人はこう言ってください。


 ステータスオープン、あるいは能力閲覧。まあ自分の能力がみようと言う意思が想起させる言葉なら何でもいいです。とにかく言ってください。それで分かるはず」


 は?







「ステータスオープン」



 木崎ほのか 状態 正常


 発現能力

 植物操作 暗視 飢我耐性 魔力貯蔵 迷宮一時接続




 ……うっそだろ。 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る