第10話 運良く荷物持ちとして迷宮に潜れることになった

 迷宮に潜って評価つけろとか言われても入る資格がない。無理やり潜ろうとすればいけそうだができれば変な騒ぎは起こしたくないのが正直なところだ。となるとどうにかして迷宮に潜る許可を貰わないといけないんだよな。名前があれだから興味はあるけど仕事がなかったらそこまでして潜りたいわけではない。けど評価が欲しいっていうんだから潜らないといけないか……



「Eクラスでも初心者迷宮潜るの許可下りませんかね?」

「他のクラスにパーティ組んでもらえるように頼めば?」

「それ以外で」

「そんなものはない」


 やる気のないEクラス担任とやりとりは何の収穫もなかった。一人で潜るという線は無理っぽいなこれは。どうにか問題なく正規の手段で潜れれば良いんだけどな。


 取りあえず迷宮受付にもう一度聞いてみるか。前聞いたときはだめだといわれたけど。


「駄目です。Eクラスの迷宮入場は許可されていません」


 取り付く島もない、という態度は前と変わらずだった。というよりEクラスと知った後明らかに態度が変わったのを覚えている。


「前と変わらずか」

「前と変わらずで、これからも変わらずです」


 きっぱりと断言するその姿はEクラスには何の権利も渡さねえぞという学園の意思を感じた。


 ……いや、3000万払ったんだから迷宮くらいは入らせろよ。死んだら自己責任くらいは守るつもりだぞ? 死ぬつもりは出来るだけないが。


「他のクラスについていく形だと大丈夫ですか?」

「許してくれる方がいれば。ただその場合監督責任が発生し、万が一あなたが無くなった場合迷宮探索に必要な能力もないのに迷宮に同行させたということで評価が大きく下がります。それを飲んで付き合ってくださる知り合いがいれば入れるんじゃないですか?」

「よほどのことがない限りは死なないとは思うけどそうなると付き合ってくれるのは奇特なやつか金に弱い奴だけか……」

「お金で釣るんです? 随分お金に余裕がある親御さんなんですね。羨ましいです」


 自腹だよ、とは言わなかった。そういや親が生きてると偽造したみたいなこと言ってたっけ。まあ勘違いさせたままでいいか。


「そうですね。この迷宮見物してみたいので最悪そうなるかと。釣られてくれそうな方紹介お願いできますか?」



「話を聞いていたのですがでしたら私達と一緒に潜ります?」


 振り返るとそこには少女が三人立っていた。



 今年の1年のAクラスの生徒3人パーティでこの世界では珍しくない同性カップルだった。何か女一人に女二人のハーレムらしい。百合に挟まるなとか前世の過激派百合厨は言い出して絶対殺すとかいうんだろうな。そして男親を百合豚に殺され概念存在になった百合豚絶対殺すマンに殺処分されるまでがお約束か。まあこの世界ではレズだろうとホモだろうと迷宮アイテムで子供作れるから同性カップルだろうと人口維持に問題ないしどうでもよくない? という風潮だし俺もどうでも良いんだが。


 才能の芽が意味もなくつぶれる環境でさえなければどうでも良い。


「その、交際のお誘いとかは勘弁してくださいね」

「全くそんな気は無いので安心してください」


 何故かそれはそれで気に入らないみたいな目で見られた。さすがに理不尽じゃないか?


「では入りますね。荷物持ちもお願いします」

「了解です」


 リーダーらしい金本さんの号令で特に気負うことなく迷宮へと俺たちは足を踏み入れた。



「この迷宮は特に厄介な特徴はないシンプルな迷宮となっています。初心者向けというのは伊達ではなく魔物が出現するときもその前に鏡が表れてその後に鏡の手前にガラスに近い身体をした魔物が出現するという形になっているので魔物の出現がわかりやすくなっています。魔物自体もそれほど強くなくAクラスなら1学期前に最下層にまで踏破もできるパーティも珍しくないそうですね。Aクラスでは2学期に最下層踏破の試験が出ると聞きました」

「へぇー」


 うちは授業そのものがないぞ。格差すごいな。まあ自由時間が多いのは俺にとってはAクラスの授業よりはるかに価値があるか。


「Eクラスはその」

「何の授業もないです。ついでにほとんどの施設は使用不可。食堂も一番安い定食しか出してこないとか。味が評判らしいですけど一回行ってどうでもよくなったので外で食べるようになりましたけど」

「そ、そうですか」

「ってかそこまでしてこの学園に通う意味ある?」


 どちらかというと茶色のショートカットで元気っ子の印象を受ける日山さんがドン引きした顔で少し前を歩きながら言ってくる。探知能力で周囲を調べる以上中心にいる必要があるので最後方で荷物持ちやっている俺のすぐ前にいるのだ。斥候というよりは探知役といった感じか。Eクラスの俺がいるので後ろからの奇襲にも対応するためだろう。少し申し訳ない。たぶんいつもは斥候として前に出ていそうだからな。


「授業が無いのがいいです。正直ここの授業に興味はなかったので。ある意味Eでちょうどよかったとすら思ってますよ」

「それで後で苦労しないといいですけどね」


 今政府のつかいっぱしりで苦労しているが、とは言わなかった。神選びを間違えた俺が悪い。たまに煽りに来るだけで殆ど話しかけてこないのだけが救いだろう。あとやっぱり末期患者救済プログラムとか出来るのも政府と関係持ったからこそできたことだからそこも悪くない。


「まあ物覚えも悪いので授業も理解できないだろうしいいんじゃないですか? 実戦で磨くタイプでしたからね」

「へぇー」


 答えがアレだったので3人とも興味を失ったようでそれからは特に話しかけてこなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る