第5話 国立第一探索者学校

 あれから誰とも関わることはなくぼっちのまま俺は小学校を卒業してしまった。学校関係で何にも思い出らしいものはない。白輝君周りのことくらいだろうがそれ以外で特に覚えている思い出は本当になかった。この世界のアニメや漫画の思い出の方がよっぽど多い。


 やばすぎだろ……

 前世のまだ社会からドロップアウトする前の小学校生活の方がまだ人と少しだけは交流していた分ましだった気がしないでもない。前世から強制引継ぎをしたコミュニケーション能力(低)は本当に害しかない。凄い機械を作れるとか専門知識持ってますとか実は役に立つ技術を覚えていました、とかじゃない限り正直ニートの前世の記憶とか持ち越さなくていい。



 そして卒業してから一年ちょっと。俺は今、探索者学校に入学して生徒をやっている。もう二年生だ。


 最下位クラスのEクラスで退学せずにたった一人まだ残っている。2年生でまだEクラスに残ってるのかよ、とぶっちゃけバカにされている。国立第一探索者学校で完全に孤立していた。


 そもそも俺としては素直に近くの普通の学校に進学するつもりだった。だけど事実上の俺の監視者兼一応保護者も兼ねているのかもしれないクール美女こと荒巻さんから探索者学校にはいれと言われたのだ。


 探索者学校卒業生という肩書があれば話を通しやすい場面が割と多いから、と。


 いや、俺の肩書とか経歴くらい国なら適当に作ることくらい出来るんじゃないか?ぶっちゃけ長年探索者やってるベテランです(7年なので事実)とでも言えば学校卒業生よりももっと話は通しやすいはずだ。というか国のエージェントという肩書の方がよっぽど通りやすいやろがい、と思ったが言える雰囲気ではなかった。


「貴方は非常に異質の探索者です。この機会に同年代の探索者がどういうものか、というのを知っておくべきでしょう」


 同年代の探索者に混じらせて同年代との繋がりを作らせようとしているな、と思った。そういや学校で友達一人もいないのたぶん把握されてるわ。これじゃやばいと思われたのかもしれない。普通の学校に行かせたらまたぼっちを貫くと悟られたりした?

 ……別に学校外では友人かはともかく知り合いはそれなりの数が前世の千倍


 ……前世は0だったからプラス千人超いるから対して気にすることはないような気がするけど。そんなに学校の友人とかいうやつがいるのが重要なんだろうか?


 一応それを持ち出してそれとなく拒否してみたが駄目だった。国の使いっ走りをやっている身ではっきり嫌です、と何回も言い続けるのは正直きつい。まあもともと中学も高校もぼっちで特に何もせず過ごそうと決めていたので、だったら探索者学校でいるだけの生徒をやるのも大して変わらないのでは? と言われて言い返しづらかったのもある。



 そして言われるがままに中高一貫で一般の中高より1年多い7年過ごすことになる探索者養成学校、その中で全国で一番レベルが高いという国立第一探索者学校、通称一校の入学試験を受けた。ぶっちゃけ一番ランクが高い学校なのにどんな成績でも入学は決まっているらしい。調べてみたら入学は誰でもできるがクラス分けのための試験はあるらしくその結果で学生生活が大きく変わるという話だった。卒業率を調べたら入学時の60%くらいが卒業できるらしい。


 あと学費がバカ高い。一年で3000万ってかなり高くないか? 探索者という職業に必要な技能を安全に学ぶための費用らしい。そう言われれば危険回避とかにそれぐらいいるかもとは思うが……いや、やっぱ学習費用としては高いわ。この学費が事実上の足切りになってるんだろう。というかついでに調べた他の第二第三とかかなり安いんだが? 公立学校より安い。探索者支援で安くなるとか何で第一だけむしろ高くなるよ? いや、代わりに試験の結果で合否が決まるので全員合格じゃないんだが。


 と聞いたらあそこは事実上学校長の権限が強く国立というより事実上私立に近いからですとかいう説明を荒巻さんからされた。だからか学習環境は他の探索者学校とは全然違うらしい。





 そしてそんな学校の肝心の入学試験の結果はというとまあ、うん。


 筆記試験は使おうとすれば疑問に対して大体は解を示してくれる権能を使って問題文の解を表示するズルをして筆記満点! とかも出来そうだったが素の頭があれなのでズルしても入学後に座学についていけないのは目に見えていた。答えがわかっても理解する頭がなかったらすぐボロが出るからな。同じことを繰り返すがこういうのはそれを使いこなす知恵も伴っていないと意味がない。なのでそのまま素で受けた。


 ……試験勉強は一応したが手ごたえはなかった。それに加えてぶっちゃけ前世の知識は全部忘れたし残っていても大した知識は全くないし世界が違うので役にも立たない。なので結局ほとんど答えられずに終了。


 実技面は迷宮潜りで上げたスペックとセンスがないので回避を捨てた再生能力と防御貫通の黒化した手での近接攻撃という頭の悪い戦闘方法が昔はメインだった。


 ……それだけでも人類らしい頭を使った戦闘をしていないのに最後らへんになると迷宮を潜り続けた果てに完全に人から怪物に存在変異した結果身に着けた概念攻撃でごり押しの更に頭の悪い戦い方しか最近はしていない。


 かと言って概念攻撃といった強力な戦闘手段の類は基本的には隠しておけ、と言われているので言うことはできない。俺としても自分の戦闘方法は付き合いもない人間には明らかにしたくないので言いたくない。


 となると武術も魔術も全然なので何か戦闘に役立つ能力は持っていますか? と面接で聞かれると特に何も取柄はありません、としか答えることしかできなかった。再生能力くらいは言ってもいいかもしれないが肉の盾として使いつぶされそうなので言うのはやめた。たぶん荒巻さんは本来の戦い方を表にできなくてももうちょい出来が良いと勘違いしているかもしれない、と思った。たぶんそこそこの成績を残すはずだ、と。まあ普通に駄目な奴だとちゃんと分かっているという可能性もあるかもしれないが。


 


 試験の結果あなたはEクラスと判定されました。


 うん……だよな。全然手ごたえ感じなかったからな。こうなるわ。納得しかない。




 成績別で振り分けられるクラスで一番下のEクラスは正直言って一つ上のDクラスと比べても圧倒的に扱いが悪かった。


 まず入学式に出られなかった。明らかにぼろい教室で他のクラスが式に出席している間何もせず待機させられていた。お前らは入学はさせてやるが生徒扱いしねえから、と言葉には出さないがそういっているのがありありと伝わった。


 お前結構な入学費と学費払わされてるんだぞ。それでこの扱いおかしくないか? とは思ったが能力もないのに一番レベルが高いこの探索者学校を受けるような身の程弁えてないのが悪いんだよ! とでも言いたいのかもしれない。

 いや、それでも一年分で三千万払わされてるんだから最低限の扱いはあるべきじゃないか? レベルの高く安全な教育のためとやらで前世でも上から数えた方が早い学費払わされてるのに授業とかなさそうなのはおかしいだろ、とか。


 俺だけで考えるなら一応それなりに危険度の高い仕事を昔からやってるので給料は良い。国家の犬かつかなり高給取りなので金の心配は全然ない。むしろ他の事の方によっぽど金を使っている。十億単位で使ってるので確かにそれに比べれば問題はないだろう。授業もないのはむしろプラスだ。学園から規則で出られないとかになったら糞だが。



 個人的には問題無いけど釈然としなかった。納得できる十億と納得できない三千万じゃ無駄にした感が全然違うわ。ちなみに10人中4人くらい猛抗議していた。


 だがそんな不満そうな俺達に明らかにやる気のなさそうな女教師は言った。


「当然の扱いだぞ」


 と。

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