第2話 転生してすぐ親がダンジョン災害で死んだ件
気のせいじゃなく記憶を持ったまま転生していた。
生まれたとき、よくは見えないが新しく生まれた俺をこの世界の親も前世と同様に祝福してくれていたと思う。
溺愛ではないがネグレクトもない。つまり普通の愛され方だった。前世と違うのは親が教育ママじゃなかったことくらいか。
今でもいるだろうが一昔前お受験ママとか言われていた人種だ。小学校、下手をすれば幼稚園の頃から良い学校に入れるためとか言って勉強漬けにする親のことだ。 ニートの俺が言う。やめておけ。
良い学校を出れば一生安泰だからと小学生に言っても大半の子供は理解できるわけがない。理解できない理由できつい勉強を強要するのはまずやめておいたほうがいい。
勉強嫌いを発症して後々学力が全然伸びなくなる。初期学力がプラスされる代わりに後で学習意欲がマイナスになって最終学力が減るタイプのやつだ。子どもの学力を伸ばすならまずどうして勉強が必要なのか、をきちんと子供ながらに理解できる説明をして納得させてから知育玩具とかで遊びながら学ぶみたいな過程を経て勉強へと移行させたほうがいい。
出来るやつがいるのにできないのは甘えとかいう奴がいるができないやつが生まれる可能性が圧倒的に高い選択を押し付けるのはむしろ親のほうの甘えだよ。親なら失敗する確率の高い教育方法をできるだけ避ける努力をするのは義務だと正直思う。
こんな教育論みたいなことを何でいうかって?
「こんなあっさり親父とおふくろが死ぬのかよ……」
一番成長するために向いた精神状態は何か?
努力することが絶対必要だと強く理解できていることだ。つまり上の教育論云々とかよりよっぽど切実な成長意欲がわく。
前世は親不孝のニートだった。精神も能力も最底辺だった。
前世のネットでニートは生まれ変わっても頑張るわけないだろとかいう馬鹿がいたがむしろこのあっさり命が消えるやばい世界でニートメンタル持ちが外身鍛えないとって思わない奴いるかよ。
アニメ漬けの奴の方がよっぽど理解している。
これ、対人ゴミのニートが鍛えもしないでそのまま暮らすなんて魔物にやられて終わりの死亡フラグ以外何でもないだろ、と。
両親は三歳の時に迷宮氾濫に巻き込まれて死んだ。これで別に珍しい境遇じゃないという時点でやばすぎる世界だった。
これで対人ゴミで死に物狂いで鍛えなかったらむしろ逆に大物だわ。自前の力を持ってないとニートのガラスメンタルじゃ安心できないだろ。鍛える過程で死んでもそこまでだわ。
対人能力が無くて誰かに助けてもらうのに期待できない以上最後に頼れるのは自分の力だけだ。普通の人は仲間作ってやっていける能力があるんだろうけどまずぼっちになるのが目に見えている俺はもう一度言うが自分の力を上げるしかない。
孤児院(迷宮災害孤児は珍しくないため全国にかなりの数がある)でも特に友達はできなかった。誰かしらとつるみだす子供の中で俺だけが浮いていた。
ニートの記憶はむしろ持ち越さない方がいい。失敗経験の多さがほかの子供に話しかける勇気を奪う。話しかけてうまくやれる自信がわかない。
8歳で孤児院から追い出されて孤児用のマンション(迷宮近くの地価の安い立地でかなりの部屋数がある)で一人暮らしを始めたがやっぱり近所づきあいはなかった。
「じゃあ、今日の授業はここまで!」
さようならという挨拶の後子供たちは友達と一緒に帰っていく。この世界では割と危ないのが原因なのかそれ以外の理由があるのかは知らないが小学生は放課後遊んだり部活をしたりはできない。基本的にすぐ帰れということだ。戦災孤児も珍しくないので戦災孤児だからと他の孤児の奴が親が健在の子供に馬鹿にされたりいじめられたりといったことは無かった。というか苛めは基本的にない。この年頃で苛めなんかしてなんかこいつ性格悪いな、なんて思われて孤立なんかしたら危険なことが分かっているんだろう。でも性格があれで孤立はする奴いるんだけど。いじめはしないけど嫌いな奴には関わりはしないということだ。
俺のことです。普通に孤立しています。ニートの記憶とか゚本当に要らないよ。失敗経験の山で話しかけるの躊躇する癖とか本当にゴミだわ。前世の記憶が必ずしも役に立つなんてみんなは間違っても勘違いしないようにな!
「黒乃手、じゃあな! また明日な!」
「あ、うん。また明日」
とはいえこんな孤立した俺でも朝と帰りの挨拶くらいはしてくれるもの好きは一人いる。
光関係の文字縛りで名前つけたの? と思うくらいピカピカの名前の男子生徒だ。性格は名前の通り明るく誰にでも話しかけていき、俺にすら朝と帰りの挨拶をしていく陽の者だ。もちろん大体の者と仲がいい。正義感も強く勇敢で三度ほど学校に迷い込んできた魔物相手にほかの子供を庇いながら戦っている姿を必ずみている。
というより迷宮から離れた場所に建てた学校に魔物が迷い込むとかどうなってんだやばいだろとも同時に毎回思っている。死なないようにさらに鍛えなきゃ……! と昔はそのたびに思っていたような気がする。
俺への挨拶を終えて友達と帰っていく白輝を見送る。ああいう奴がきっと頭角を現すんだろうな。
取り出した支給された携帯に届いていたメッセージを見る。はぁ…迷宮潜るか。お仕事だからな。
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