第9話 ステップ・バイ・ステップ 2

「エイリアンズにですか? 俺が? なんで? 配信者でもないのに?」


 言うなれば、川辺で素振りばっかりしていたらプロ野球にスカウトされたようなものである。

 エイリアンズは配信者が集まったクランであるため、実績も何もないウォーカーが声をかけられるというのはあり得ないことだった。


『いや~本当はね、エイリアンズの配信者組達が今度の大会でるはずだったんだけどー』


『ブランクは軍隊に行ってしまったからねえ。韓国に生まれた男の宿命だよ』


『かわいそうにブランク。一年間、ゲームのない生活なんて』


『きっとアオハルメモリーのログインボーナスがもらえなくて泣いてるねえ。帰ってきたらアカリと三人でいっぱいゲームで遊ぼう』


『何やる? MOBAとか?』


『No~! 国を守った次は、家族を守らなきゃいけなくなってしまう』


 あははは! とアカリとリッカーの二人はゲラゲラ笑っていた。

 その場に取り残されていたウォーカーこと木原進は困惑していた。


「いや、エイリアンズって他にも人いますよね。その人たちにお願いするとかは」


 うーん、とリッカーは少し悩ましそうにして答える。


『たしかにメンバーはいるんだけどねえ。みんながみんな戦うゲームが得意なわけじゃないからねえ』


 なるほど、とウォーカーは納得した。

 確かにエイリアンズは武闘派ストリーマー集団というわけではなく、RPGゲームやアクションゲーム、ボードゲーム、さらにはキャンプ動画を出す人など様々なため全員がFPSゲームをやっているわけではなかった。


 考えてみればアカリがいることがそれを物語っている。

 本人が言っていたように企画や編集をする人物がメンバーとして参加している時点で、このゲームに参加するメンバーの数が足りていないことの証明だった。


「ほかに人気の配信者とか臨時で誘ったりしないんですか?」


『チームの知り合いだとちょうど同じ時期に他のゲームの大会がある人が多くてダメだったんだよ』


『まあ苦手な人に強要するのもちょっと申し訳ないから、誰か適当にかっぱらってくるかなって思ってたところなわけですよ』


 かっぱらわれる野良の人に申し訳ないと思わないの? とウォーカーは言葉を押し殺した。

 


 

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エイリアンズ・ゲーミング 春木千明 @harukichiharu

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