第37話 VSギソ
「俺自らが、相手することになるとは。【フォレスト・ボム】!」
ギソが、両手から緑色の炎を放つ。
波打つような軌道を行い、騎士の一人に着弾した。
「ごはあああ!」
受け止めたはずなのに、ヨロイが破壊される。
「身体に入り込んで、内側から爆発した?」
「そのとおりだ。俺のフォレスト・ボムは、防御は不可能!」
その後も、次々と騎士たちが犠牲になっていく。
「これも、空間転移の応用よ。空間を抜けて、対象に的確に当てているのよ」
相手の攻撃手段がわかっているのか、ソーニャさんは魔法障壁で受け流すように退ける。
ボクは、あえて打ち返すしかない。反撃の手段がわからない以上、対処療法一択である。
「魔法同士なら、なんとか凌げるみたいだね」
「それでもジリ貧よ。ヤツの魔力は、無尽蔵みたい」
どこからか、魔力供給を受けているのか。
「ヒューゴ、考えていることがあるんだけど」
ボクはソーニャさんから、ある可能性を聞かされる。
「ありえるね」
「でしょ? ギソなら、それくらいできるわ」
たしかに、卑怯者っぽい戦略だ。
「エレオノル様、どこかに、ギソの魔力源があるはずです。探しましょう!」
「はいっ。ですがヒューゴさん、どうやって……」
「台座に女神像が、あるんです」
ボクは、台座を指差す。
邪神像は、見当たらない。とはいえ、まだ女神像が健在である。
「わかりました。しかし、みんなを置いていくのは」
姫は、他のパーティたちが心配のようだ。
「ご心配なく。我々は、まだ全滅したわけではない。エレオノル」
「お願いします」
ボクとエレオノル姫は、女神像に触れる。
すると、遺跡まで戻ってきた。
「この遺跡のどこかに、ギソに魔力供給する触媒があるのですね?」
「あるいは、本物のギソがいます」
「本物の?」
「はい。彼はボクたちと対面したときのセリフを、覚えていますか」
――俺がギソだ。今はな
「今は、自分がギソと」
「はい。どういうことなのかなって思って、敵の構成などを思い出したんです」
「まさか、彼もホムンクルス!」
「その可能性が、高いです」
ギソは、魔術師だ。ホムンクルスを何体作っていても、おかしくない。自分のコピーさえ。
「なるほど。ギソはコピーを戦わせている、といいたいのですね?」
用意周到なギソは、エルンスト王子と戦わせることによって、自分が本物のギソであると錯覚させた。その可能性は高い。
「それだけ、憎しみが深いということです。また、それだけ臆病なクズ、とも言えますね」
ギソに聞こえるよう、あえて大声でギソを罵った。
「王家に恨みをぶつけると言いながら、その実やっていることはインチキ。ヘタレです」
このような輩は、直接対決が怖いのだ。
ギソよ、聞こえるか? ボクはお前を、許さない。やるなら、ボクを狙うがいい。
『おのれ。この偉大なる邪神・ギソに向かって、ヘタレとは』
邪神像が、ひび割れた。人間サイズにまで膨れ上がり、ヘビを思わせる亜神と化す。
「これが、ギソ!?」
「ギソの正体は、邪神そのものだったのか」
神父セニュト・バシュの血族に取り憑いて、邪教を広め、追放されてもなお王家を破壊しようと仕向けた、異形の神。
憑依された側にも気づかせぬまま、悪事を働かせていた、厄災の化身。
それが、本物のギソだったのである。
「邪神ギソ。お前の目的は何だ?」
『肉体を再生させて、生きながらえること。我の肉体を復活させるには、まだ大量の死体が必要だったのだ』
だから遺跡の宝物庫に人を集めさせ、命を奪ってきたのか。
「あのフルドレン族は?」
『あれは本物の、フルドレンではない。王家シュタルクホンを憎んでいたフルドレンに、偽の記憶を植え付けたホムンクルスよ』
ただ肉体のパーツを組み合わせただけで、あそこまでのパワーを放つとは。
『だが、そんな事実を知っても、我が野望を止めることはできぬ! くらえ、【フォレスト・ボム】!』
フルドレンの放ったものより強力な緑色の火炎弾が、ボクに襲いかかってくる。
これは、避けられない。
「ヒューゴさん、お手伝いします。【オーラショット】!」
剣の腹に、銃を撃ち込んだ。
反動で、ボクの剣がフォレスト・ボムをかち上げる。
フォレスト・ボム同士が触れ合い、大爆発を起こした。
再度、姫がボクの剣に魔力弾を撃つ。
ボクは銃弾を跳ね返し、そのままボムに弾丸をぶつけた。
大量のフォレストボムが、一瞬でかき消える。
「とどめだ、【ウェーブスラッシュ】!」
ボクは、剣から衝撃波を撃つ。
剣から放たれた光刃は、ギソの身体をあっさりと両断した。
やはり、弱かったか。
この手の策略家の実態は、あんがいもろいことが多い。
『バ、バカな。邪神である我が……そうか、【フレイムタン】とは』
ボクの手にしている武器は、フレイムタンだ。これなら、炎の刃で不死・亡霊タイプでも切り裂ける。たとえ、実体を持たない邪神でも。
『しかし、フレイムタンといえど、我の幻視は破れぬ。なぜだ?』
「知りませんよ。なにも知らないまま、対策もできないまま、死んでいきなさいよ」
ボクは、エレオノル姫の手を取った。
「一緒に、お兄さんの敵を討ちましょう」
エレオノル姫と指を重ね合わせ、銃の引き金を引く。
邪神は、今度こそ消滅した。
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