第27話 エレオノル姫との会談
翌日、ボクたちはお城に呼ばれた。
「なあヒューゴ。オレもついてきて、よかったのか?」
ヘッテピさんが、あちこちをキョロキョロしながら廊下を歩く。慣れないタキシードなんて着ながら、ちょこまかと歩いていた。
「関係者は、なるべく全員連れてこいってさ。あきらめな」
ワインレッドのスカート型の軍服に身を包んだセーコさんが、ヘッテピさんの肩に手を置く。
「大丈夫かね? オイラ。風呂は入ってきたが、タキシードはずっとしまっておいたやつだから、臭うかも」
「心配ありませんよ。ヘッテピさん。問題はありません」
ボクたちも一応、ドレスコードに反しない衣装を身にまとっていた。
まさか、ソーニャさんに仕立ててもらった洋服が、こんなところで役に立つなんて。
「ほら見なさい。あたしが指摘したとおりじゃない。王都では、なにがあるかわからないのよ。備えあれば憂いなし。偉大なる祖父ボーゲンが、異国で拾ってきた言葉よ」
ソーニャさんが、鼻を鳴らす。さすが貴族だね。こういう場でも、堂々としている。一応格式張ってはいるが、必要以上に緊張なんてしていない。
純度一〇〇%の農民出身なボクとは、大違いだ。
「ついたよー」
もっとリラックスしている騎士キルシュが、「おじゃまー」と応接間のドアを開いた。
なんて、あぶなっかしいんだろう?
「キルシュネライトッ。あなたね」
ザスキアさんがキルシュを咎めようとする。やっぱりこの二人は、バチバチなんだな。
エレオノル王女が、ザスキアさんを静止する。
だよね、このまま二人が争っていると、話が進まないもんね。
「それでは、席についてください。お茶をお持ちしますわ」
メイドさんが、ボクたちの席にお茶とお菓子を置く。
「ありがとうございます。召し上がっても?」
「どうぞ。ヒューゴさん」
「いただきます」
一応、断りを入れてから、手を付けることに。
うん、おいしい。どこで食べたお菓子より、上品な味わいだ。個人的には、そのへんで売っている駄菓子のほうが食べやすい。人の目を気にしなくていいからだ。
高貴な人の前では、お菓子一つ食べるにしても緊張するね。
キルシュは「いただきまーす」とクッキーを手づかみで食べ始め、またザスキアさんからたしなめられていた。
ソーニャさんは慣れたもので、ちゃんとマナーを守って食べている。
他の面々は、どこをどう攻めていいのかわかっていない様子。ボクも、例に漏れず。
「ところでエレオノル姫様、お話とは?」
「実はみなさんに、ダンジョンの探索に同行していただきたいのです」
現在、姫様は最下層を攻略中である。しかし、ダンジョンの最下層には魔物しかいなかったらしい。
「ですが、面白いことが」
「調べた結果、ギソが九層にいることが判明した」
全ルートを回れるだけ回ってみたが、どこにもギソはいなかったという。
だがギソの魔力反応が、九層に現れたというのだ。
「たしか、八層から一〇層への移動は、エレベーターでの移動なんですよね?」
「はい」
だが、九層はスルーされるという。九層の案内はあるが、素通りしてしまうのだ。
「ですから、あなた方にはひとまず、八層攻略していただきます」
「これは、みなさんへの試練でもある。心してかかるように」
八層を軽々と探索できる実力でなければ、ついてこさせないとのこと。
「お願いしているのに、試験するってこと?」
「他の騎士団が、黙っていないのだ。わかってもらいたい」
「ふーん。まあ、どうせ強くならないといけないんだ。やったろうじゃんね。ヒューゴ」
もちろんだ。ギソを退治するなら、どのみち強くなる必要はある。
「我々は、九層に続く道を探しておきます。いまだ、九層の入口がわからないのです」
ハズレ中のハズレといわれている九層は、そのエリア自体が土に埋もれている。
「いわゆる『石の中にいる!』ってやつじゃね? あのままギソが死んでくれていたら、ラッキーじゃん」
「だとよかったのですが、ギソの魔力はいまだ健在だと、うちの魔道士が指摘しております」
キルシュが楽観的な意見を言うも、エレオノル王女に否定された。
「埋まったまま、生きてるんじゃないの?」
「それも込みで、調査中です」
なお、フロアの壁や天井の破壊も試みたという。しかし奇妙な力が働いて、ダンジョンに傷一つつけられないという。
「九層を攻略するには、兄が追い求めていた、遺跡のアイテムが必要だったらしく。ところが、そのアイテムはなかなか見つからないどころか、遺跡自体が汚染されていて」
「遺跡の探索だったら、私の力がお役に立つかもね」
トラップ解除能力の高いセーコさんが、席を立つ。
「そうなんです。ニンジャであるあなたと、レアドロップに期待できるヒューゴさんに同行をお願いしたく」
「そうは言いますが、エレオノル姫様。件の遺跡に九層突破のアイテムがあるのはわかりました。ですが、あの遺跡は呪われています。解呪が必要なのに、解呪が可能なヒーラーが真っ先に命を落とすといいます。その呪いの対策は、ございますのでしょうか?」
ボクらのパーティにいるヒーラー、鳥人族のヴィクが、手を上げた。手というか、翼だけど。
「それと、どうしてヒューゴ殿の力が必要なのでしょうか? 遺跡に宝があるなら、セーコ氏のトラップ解除能力だけが必要のはずですが」
「呪いの解決法は、見つかっておりますわ」
ひとまず、すべては最下層にて説明するとのこと。
「準備ができ次第、八層へ向かいましょう」
「今でもいいよー」
キルシュに続き、ソーニャさんも、武装をした。
「いいんじゃないかしら? なら、お姫様についていくわ」
ソーニャさんも、同行に賛成した。
「お姫様、いつでもお手をどうぞ」
「頼もしい方々です。では、八層攻略後、最下層にて必要なアイテムがございます。それを手に入れましょう」
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