鏡の森のアリス

くまんばち

第5話「白いバッタ」

 アリスが森の中を歩いていると、突然、白いバッタが彼女の前に現れた。驚いたアリスは、追いかけてきた白いバッタを目で追った。


「なんて奇妙な生き物なの!」

 アリスは目を見張った。


 白いバッタは、実は車輪のついた芋虫だった。その車輪はクルクルと回り、まるで小さな自動車のようにスムーズに動いていた。


「いったい、あなたは何者なの?」

 アリスが問いかけると、白いバッタはピタリと止まり、答えた。


「僕はただの芋虫さ。でも、もうすぐ変わるんだ」


 その瞬間、白いバッタはまるで魔法のように変身を始めた。車輪は外れ、芋虫は繭を作り始めた。そして、短い時間が過ぎると、美しい鳥が繭から現れた。


「わぁ、なんて綺麗な鳥なの!」

 アリスは感嘆の声を上げた。


「僕の名前はピーコロ、おかげで、鳥になれた」

 彼は優雅に飛びながら答えた。するとドラムロールが流れ、コオロギたちが登場し、盛大にオーケストラを始めた。美しい音楽が響き渡り、アリスはその不思議な世界に魅了された。


「アリスさん、僕の背中に乗りたまえ」

 ピーコロはそう言い、アリスを背中に乗せて大空へと飛び立った。しかし、飛んでいる間にアリスの体が大きくなり始めた。さっきまで背中に乗れるくらい大きかった鳥が、今度は小鳥のように小さくなった。

「これは夢なのかしら?」

 アリスは自問自答したが、彼女の心には冒険の記憶が鮮明に残っていた。

 目を覚ますと、彼女の手には小さな白い羽が握られていた。

「夢でも現実でも、あの世界は確かにあったんだわ」

 アリスは微笑んだ。



(おわり)







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