『沈んだバベルと水中のイカロス』

お題『沈んだ図書館』

制作時間:15分程度


 水面を眺める。


 かつて栄華を誇った文明の叡智が、この湖の底に沈んでいる。

そう思うと、なんだか浪漫を感じるな。


 水面の、その奥を眺める。


 神に届かんとした塔の名残はすでになく、螺旋状に作られた階段と、それを挟むように置かれた本棚。


 ここは、バベルの図書館。


 かつて全てがあった場所。


 神に沈められた、遠い昔の夢の跡。


 僕は潜水服を着て、図書館の中へと一直線に泳ぐ。


 水浸しでもう読めなくなっているであろう本を尻目に、螺旋階段をゆっくりと下る。


 底なんてない。

そう思ってしまうくらいに、この図書館は深……いや、高かったのだな。


 本の間から生えている海藻と、どこまでも続くような階段、そしてきれいに並んだもう読めない本の数々。

この幻想的な風景に囲まれて、僕は底を目指す。


 


 もう30分は潜っただろうか。

僕には帰り道なんてない、酸素ボンベの残量を見てそんなことを思う。

叡智と浪漫への片道切符、死ぬなんて承知の上で潜っている。

僕は図書館を下へ下へと泳ぎ続ける。


 ついに辿り着いた底。

そこには、地下へと続く螺旋階段が延々と続いていた。

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記録:文字を打つ軟体動物 文字を打つ軟体動物 @Nantaianimal5170

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