『笑う貝殻』
お題『貝殻/笑う/藁』
制作時間:40分程度
これは私の友人が失踪する前にしていた話なんですが……怖くて怖くて、私も人に話さなければやっていられないのです。
『怪談』という作品に昇華して恐怖を和らげるために、怪談師のあなたにこの話を再編してもらおうというわけです。
さて、ここからお話するのは、その友人が私に話してくれた内容です。
最近、散歩してた時にさ、きれいな巻き貝を見つけたんだよ。
それでさ、道に落ちてるならいいかなって思って、持ち帰って、棚に飾ったんだ。
その日の夜、物音がして目が覚めちゃってさ。
どこから音がしてるのか、探ってみたんだよね。
その日は、音が小さいからか、どんな音なのかとか、どこから音がしてるのかなんてわからなかったんだ。
次の日の夜も音がしてね、今度は音が大きくなっていて。
それで、棚の近くから音がするってわかったんだ。
色々と探ってみたんだけど……巻き貝の内側から笑い声が聞こえるんだよ。
その日は怖くなって、布団の中に潜ったんだ。
それから、段々と笑い声は大きくなっていって。
怖くて怖くて、話を聞いてもらってなんとか気を保っているんだ。
こんな話を聞いて、なんでその貝を捨てないのかって、友人に聞いたんですよ。
そうしたら、あんな綺麗な貝殻、捨てるなんてもったいないと。
いや、与太話だと思いましたとも、友人が失踪するまでは。
友人が失踪して1週間経った頃、マンションの管理人が部屋にあった物の引き取り先を探している、なんて噂を聞きまして。
噂の貝殻はどんなものか、と見に行ったのです。
とても綺麗な貝殻でしてね、私もすっかり魅了されてしまいました。
その貝殻といくつかの思い出の品を持ち帰って、その日の夜のことです。
ああ、友人の話というのは少し嘘が混じっていまして、現在の私の身に起こっている話でもあるのですよ。
友人の言っていた通り、音がするんです。
貝殻から音がしているって知っていた私は、耳を近づけてみて。
そうしたら、笑い声だってやっとわかるくらいの小さな音でした。
次の日、笑い声だとわかるくらいの音がして、気付いたんです。
笑い声の中に、失踪した友人の声が混じっているって。
怖くて怖くて、でもあの貝殻には不思議な魅力というか、惹きつける魔力のようなものがありまして。
それで、手放すこともできないのです。
藁にもすがる思いで、私が一部になるまでこの恐怖をなんとかして欲しくて、あなたに話しているのです。
どうか、この話を、できるだけ多くの人に広めてください。
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