『過去』
お題『過去』
製作時間:15分程度
あれは小学5年生の時だったか、私は自分が避けられていることに気付いた。
思えば、幼稚園の時からそうだったのだろう。
思い当たるところなどなく、私が何をしたのだと空に怒りをぶつけていたものだ。
そんな調子だからかもしれないが、私は中学に入ってからも自分が避けられているのに理由なんてないと思い込んでいた。
ある日、授業の班行動で一緒になったクラスメートに話しかけてみた。
親と話すことはよくあったから、俗に言うコミュ障よりかはマシだったかもしれない。
しかし、それはまぁ見苦しいものだったのだろう。
おどおどした不明瞭な声で私は言った。
「な…で僕は避けら…て…るの?」
そいつは言葉を返す。
「そりゃあ、お前がブスだからだろう。」
余りにも衝撃的だった。
私は容姿に気を使うどころか、自分の姿を鏡でじっくりと見ることも、その姿を他人と比べることもなかったのだ。
容姿という新しい価値観に戸惑いを覚えつつも、私はその日から化粧やお洒落を始めてみた。
それも見苦しいものだっただろう、しかし努力は実を結ぶ。
私は見事なまでに2人の友達を得たのだ。
2人、少ないと思うかもしれない。
しかし、まともなコミュニケーションも取れなかった私にとって、快挙には違いなかったのだ。
時は過ぎ、私は大学生になっていた。
友達を増やそうという努力も虚しく、サークルに入ろうとしても断られ…
人間は容姿で人を判断するのだということを学んだ。
就活の時もそれは同様に、容姿の差というものをひしひしと感じたよ。
面接での受けは最悪で、面接官は顔も見たくない、いや顔を見たくないといった態度を見せてきたからね。
それが今や、中小企業とはいえ君の上司になっているんだから、世の中はわからないものだよ。
え?
そこまで醜く見えないって?
ああ、整形したからね。
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