妖怪 ぱちぱち
炭酸を飲んだとき、耳元でぱちぱちと、炭酸が弾ける音がすることがあるだろう。この音がことのほかおおきく聞こえることがあれば、それは『妖怪 ぱちぱち』が慌てているのである。
『妖怪 ぱちぱち』の生息地は、現在、炭酸飲料の瓶や缶であると考えられている。かつては天然炭酸源泉や、シャンパンを醸造する倉を主な生息地にしていたらしい。
これは妖怪文献学をおもに調査している妖怪事象総合博物館研究員、
近年の瓶・缶飲料の技術の発達によって急速にその生息地を拡大しているのだ。
そういう意味ではとても目端の利く妖怪であると言えよう。
ところがこの妖怪、ちょっと間が抜けているのだ。
限られた場所にしかない天然源泉から瓶・缶・ペットボトルに棲息域を増やしたのは、種の拡大戦略というものだが、人間がぷしゅっと容器を開けたときに、即座に逃げ出すべきにもかかわらず、のんびり居座り続け(※)ほとんどの『妖怪 ぱちぱち』は人間の口の中に送り込まれてしまうのである!
そのため、出してくれ! とばかり、人間の顎、頭骨との接続部分、顎関節のあたりをぱちぱちと叩くことで、人間が口を開くことを促しているのだ。
『妖怪 ぱちぱち』とは、その顎関節のあたりを叩く音から命名されており、この妖怪がのんびり体質でなければ、人間にはほぼ観測されない。
また、人間がこの妖怪を知らないうちに飲んでしまって、健康被害に遭ったという調査結果はない。
※スーパーマーケットなどの店内音楽がこもりうたになって寝てしまう説や、自動販売機の暗がりが居眠りを誘うのにちょうど良い説などがある。
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